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飛鳥アートヴィレッジ2013 総括文 『「飛鳥」と「アート」の理想的な天秤の支点を探ること』

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ttk山中がプログラム・コーディネーターを務めました「飛鳥アートヴィレッジ2013」の成果集がこのたび完成いたしました。
こちらの成果集はttkにて閲覧可能ですので、ご希望の方はお気軽にお申し付けくださいませ。
成果集内にて執筆いたしました当プロジェクトの総括文を以下に掲載しております。ご一読いただければ幸いです。

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「飛鳥」と「アート」の理想的な天秤の支点を探ること

 明日香村を舞台とし、10日間の短期アーティスト・イン・レジデンスと成果発表の展覧会で構成する「飛鳥アートヴィレッジ」。各地で近年多数展開されている「地域型アートプロジェクト」の多くと同様に、飛鳥地域にある様々な要素を表現に取り入れることを、主催者側がアーティストに求めることを前提としています。この手法によって地域に還元されるべきものは、現地にかかわる人々に、外部からやってきたアーティストがレジデンスでの活動と展覧会での作品を通じて、今まで表に現れにくかった地域の特徴や個性を提示することだと、私は考えています。

 今年度は、平面作品に限定した昨年度の応募基準を撤廃した結果、本来からコンセプチュアルな表現をおこなうインスタレーション(空間構成表現)のアーティストの応募が目立ちました。選抜された5名のアーティストが、10日にわたるレジデンスの間、飛鳥に真摯に向き合いながら飛鳥への解釈を深化させ、展覧会での作品を通じて提示した飛鳥は、昨年以上に飛鳥を抽象化させたアプローチとなりました。アーティストたちと共に考えた作品展のタイトル「宙の土 土の宙」に象徴されるように、彼らは飛鳥時代の史跡や特定の場所といった具体的な要素から離れ、壮大な事象である「空・宇宙」と「大地」に自らの制作テーマを設定しました。このアプローチには、飛鳥のイメージをより本質的かつ根源的なものにまで昇華させるという意図もありましたが、一方でどの地域にも共通しうる要素を提示したことには、いま現在の飛鳥への冷淡なまなざしも含んでいたこともあえて書き添えておきます。

 本来、現代美術とは、常々表に現れにくい事象や概念を拾い上げたり、現代の価値観に対しての問いかけや問題提起のきっかけを作り出すものでもあります。今年度の「飛鳥アートヴィレッジ」は、結果としてアーティスト側による自らの表現の堅持を前提に地域との理想的な関与を探り、現代美術の領域が提示するべきクオリティにはなりました。ただ、ここ飛鳥においてこのアプローチが理想的かどうかの答えはまだ見えません。「飛鳥」という本来から地域のブランド力が強いという現地の特性にあって、その反映の主軸をどこに取るのかによって、アーティストの「飛鳥」の表現は大きく変容します。飛鳥“時代”の「飛鳥」と、現代の明日香“村”としての「飛鳥」は、必ずしも一致しないという様相を意識すべきです。「国」と「地域」の両極に位置づけられる昔と今を、現代社会の構造を踏まえながら表裏一体の関係で真摯に向き合えば向き合うほど、そこには純化された相対論が「衰退」というキーワードを誘導してしまう恐れがあります。

 すでに歴史と観光資源の枠組みの中で価値が確立している飛鳥時代の諸要素よりも、ここにいま暮らしている人々やその生活および環境に焦点を当てることが、現在の「飛鳥アートヴィレッジ」の目的をより特化させることのできる方策ではないでしょうか。次年度のプログラム構築に際しては、地域側とアート側の交流にあらかじめ特化する手法も選択肢として検討すべきと思います。地域性をより反映させた作品をアーティスト側に求めるのであれば、現状の10日の短いレジデンス期間とアーティストへのサポート体制の調整はもちろんのこと、プログラム内での地域との交流をより推進する前段階として、当プロジェクトの村内での認知の浸透に力を注ぐべきと考えます。それによって、展覧会への来場者も村民の割合を増やす必要があると思います。その足掛かりとして、初めてプログラムとして実施した村民のお住まいに宿泊する「民泊体験」と、参加アーティストの一人の作品が実質的に地元の人々との共同制作になった今年度の2つの実績は、お互いの立場への歩み寄りと、昔と今の飛鳥の印象を両者が共有できた、今後に確実に活かされる成果となったと思います。

 地域側とアート側の思惑や主張の間に生じる、双方の価値観の差異は、このプロジェクト形態においては常に付きまとう課題です。両者の理想は常に一本の同じ軸の両極にあり、そのちょうど真ん中でバランスを取る選択は、現実的に不可能です。さらに、昔と今の「飛鳥」の価値のバランスも同様です。両者の支点の位置をどこに定めるかを、主催者である地域側が明確に提示することを期待します。その設定があるからこそ、アーティストのクオリティや、「飛鳥アートヴィレッジ」の果たすべき成果が明確になると思われます。2年目の実績を積み重ね、「飛鳥アートヴィレッジ」独自の天秤を明確に調整すべき段階にあることは確かです。

山中 俊広(2013年度 プログラム・コーディネーター/インディペンデント・キュレーター)

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Posted on 2014-05-21 | Posted in VOICE |

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