2025

2025-03-14
中村 幹「影にそそぐ」2025年3月14日(金)~4月13日(日)

中村 幹「影にそそぐ」
2025年3月14日(金)~4月13日(日)

開廊時間|12:00~19:00
休廊日|毎週月・火・水曜

会場|the three konohana

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このたびthe three konohanaでは、弊廊で初めてとなる中村 幹(NAKAMURA Motoki, b.1999)の個展「影にそそぐ」を開催します。

高校生の頃に陶芸の魅力に惹かれて制作を始めた中村は、大阪芸術大学に進学してさらに陶芸の専門的な知識と技術の習得に励み、昨年同大学を卒業しました。在学時は自らの表現の幅を狭めないように、器とオブジェ、双方の表現を行き来しながら制作を続け、学生主体の展示・作品販売の場にも積極的に参加してきました。
これまでの彼の陶表現では、人体や動植物をモチーフにすることが多く、それらを反映させる際の自然かつ丁寧な造形が特徴でした。近年頻繁にみられる細密な技術の蓄積を誇張するものではなく、自然物の模倣を経て自らの造形と表現をいかに見出すかに関心が向けられていたように思います。その実現には、モチーフとなる対象物の観察力に加え、造形力の鍛錬、そして制作に応じた土や釉薬など材料の柔軟な選択にも意識が向けられており、大学での4年間はこれからの本格的な作家活動の方向性を模索することに専心していた姿勢が印象的でした。

その集大成として、昨年の卒業制作では「あわい」と名付けた作品群を制作・発表しました。この作品群は、人工物としての日常品とそれに連なる影を実際に観察し、その形象をひとつの物体として陶で表現したものです。場所や環境、時間によって変化し、存在や実体が曖昧である影。かたや、土を捏ね焼成を経て強固な物質性を有し、不変の印象を与える陶。これらの対照的な2つの概念から、日常にあふれる曖昧な物事への視座を浮かび上がらせることを主題としています。この作品群には、実体とその存在を現す影との間から想像できるあらゆる物事だけでなく、陶表現が主軸に置くことの多い工芸が、美術との関係を考えるための新たな視点をも示唆させる可能性を有していると思います。

中村にとって作家活動初の個展でもある本展では、この「あわい」を主題とした作品に特化した内容で構成します。昨年の卒業制作で発表した作品群と、同じ主題で新たに制作した作品群をあわせて発表し、「あわい」を起点としたこの1年の表現の深まりや変化を捉えながら、この先の彼の活動を展望する機会になればと思います。

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中村 幹(なかむら もとき) プロフィール
1999 京都府生まれ、現在大阪府在住
2018 関西文化芸術学院(現・関西文化芸術高等学校)卒業
2024 大阪芸術大学工芸学科 陶芸コース卒業

[主なグループ展]
2022 「個性の想像展」浜寺公園駅駅舎ステーションギャラリー(大阪)
2023 「土とわたし」ギャラリー白(大阪)
2024 「京都花鳥館賞2023 作品展」京都花鳥館
   「大阪芸術大学卒業制作展2024」大阪芸術大学
   「工芸のちから」あべのハルカス近鉄本店ウィング館(大阪)
   「第13回国際陶磁器展美濃」セラミックパークMINO(岐阜)
   「NEW TWIST」しぶや黒田陶苑(東京)
   「アニマル展X」ギャラリー数寄(愛知)

[主な受賞歴]
2021 京都花鳥館賞奨学金 優秀賞(’22、’23)
2024 大阪芸術大学卒業制作展 学科賞
   第13回国際陶磁器展美濃・国際陶磁器コンペティション 入選

 

2025-01-09
加藤 巧「Shadow Works」 2025年1月9日(木)~26日(日)

加藤 巧「Shadow Works」
2025年1月9日(木)~26日(日)

開廊時間|12:00~19:00
休廊日|毎週月・火・水曜

会場|the three konohana

☆ 前回の個展「愛情、畏敬、恭順、忍耐」の情報はこちら

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このたびthe three konohanaでは、弊廊で3年ぶりとなる加藤 巧(KATO Takumi, b.1984)の新作個展を、2つのテーマで連続して開催します。

前回2021年の個展「Re-touch」以降も、加藤は自らの絵画および美術表現をさらに深めるべく、各地で精力的な制作・発表活動を続けてきました。2022年に東京のgallery αMで開催した「αMプロジェクト2022 判断の尺度」(ゲストキュレーター:千葉真智子)の個展「To Do」では、制作にまつわるあらゆる行為とそこに含まれる政治性に焦点を当てた新作を中心に発表し、それらの行為から派生していく彼の制作思考の拡張を示す機会となりました。さらに2023年夏にフィンランドのイーでおこなった滞在制作では、現地の建物の外壁塗装などに日常的に使われてきたライ麦粉を主成分とした塗料を調査し、その成果を自らの作品制作に反映させると共に、その活動記録をまとめた冊子も発行しました。

また弊廊の企画でも、2021年にYoshimi Artsと共同開催した「2つの時代の平面・絵画表現-泉茂と6名の現代作家展」と、2023年に弊廊の開廊10周年企画として開催した「Haste Makes Waste」の2つのグループ展に参加し、それぞれに他者の制作思考やプロセスに触れながら作品を制作・発表する中で、自らのスタンスを確かめることに取り組みました。これら近年の彼の活動では、技術や知識を習得することが自己武装的にならないように批判的な視点を持ちながら、作品や制作行為を介して他者や周辺の物事にまなざしを向け、それらとの接続の可能性を模索していたように思います。

今回の連続個展は、これまで加藤が制作活動の積み重ねを経て成熟させてきた、自らの表現の柱となる思想と信念を語るために、いまの彼の中で表裏一体となっている2つのテーマでそれぞれの個展を構成します。この構成の中で発表する多数の作品を通じて、美術に限らずあらゆる分野や環境で現代において考えるべきことが共有できる機会になればと思います。

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加藤の作品制作では、絵画技法および材料の研究が同時並行に進められる特徴があります。その手法を通じて、いかに完成度の高い作品を作り出すかという目的の前に、絶え間なく手元に現れる現象や行為の蓄積を日々観察し続けることと、それを基にした試みから現れるあらゆる結果が、彼の制作における原動力であります。さらにその中から、画家として生きる彼の存在意義と、自ら取り組む分野への信頼をも見出していると言えます。そのような姿勢で作られる彼のあらゆる作品には、表に現れないプロセスがその背後に数多く含まれ、その産物として発表を前提としない作品が常時生まれています。一般的に表に現れにくい仕事の痕跡には、当人の技術力よりもかえって思考や態度が反映されていることが多くあり、彼の制作においてもその傾向が強く見られます。

本展は、直前の個展「愛情、畏敬、恭順、忍耐」の作品制作のプロセスの中で生まれた作品の他、以前から取り組んでいた蜜蝋を主体に使った作品など、加藤の試行錯誤や、材料および自らの行為の観察の痕跡が随所に反映されている作品群で構成します。