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2014-06-05外部の展覧会情報 14年6月
ttkとご縁のあった作家・ディレクターによる、ttk外での展覧会情報をお知らせいたします。
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今年1月~3月に、ttkにて開催しました「まよわないために」展の出品作家田中秀介さんが、
「トーキョーワンダーウォール公募2014」に入選し、東京都現代美術館での展覧会に出品いたします。
「トーキョーワンダーウォール公募2014」入選作品展
会期:2014年6月7日(土)~6月29日(日)[月曜日休館]
会場:東京都現代美術館 企画展示室3F
(135-0022 東京都江東区三好4-1-1 TEL:03-5245-4111)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
主催:東京都/公益財団法人東京都歴史文化財団 トーキョーワンダーサイト
協力:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館
入場無料
http://www.mot-art-museum.jp/sp/exhibition/tww2014.html
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昨年6月~7月に、ttkにて開催しました「SLASH/09」展の出品作家斎藤 玲児さんが、
神奈川・相模原のTAMA STUDIOにて1日限りの2人展を開催いたします。
One Day Screening
開催日時:2014年6月7日(土)18:30〜21:30
出品作家:斎藤 玲児、戸田 祥子
会場:TAMA STUDIO(神奈川県相模原市中央区田名3266-2 TEL:03-6416-0725)
http://tanastudio2012.tumblr.com/
2014-06-02ttk山中 「奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2014」アートディレクター就任のお知らせ
このたび、ttk代表の山中俊広が、インディペンデント・キュレーターの仕事として、2011年より毎年開催されている「奈良・町家の芸術祭 はならぁと」の2014年度のアートディレクターに就任いたしました。
就任のあいさつ文を以下のサイトにて掲載しております。
http://hanarart2012.blog.fc2.com/blog-entry-122.html
本年度の「はならぁと」開催期間は
「はならぁと こあ」 2014年11月7日(金)〜11月16日(日)
「はならぁと ぷらす」 2014年11月7日(金)〜11月24日(月・祝)
となっております。
開催エリア、「こあ」の会場および参加キュレーターは、後日オフィシャルHPなどで発表いたします。
[オフィシャルHP] http://hanarart.main.jp/index.html
2014-05-29鮫島 ゆい 展「中空の雲をつかむように」 展示記録
撮影日:2014年5月9日 撮影:長谷川 朋也
2014-05-29鮫島 ゆい 展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介
鮫島 ゆい 展「中空の雲をつかむように」につきまして、各所にてプレビュー・レビューをご掲載いただきました。
主だったご掲載記事を以下にまとめてご紹介させていただきます。当展をご紹介くださったみなさまに、心より御礼申し上げます。
・『美術手帖 4月号』 ARTNAVI(プレビュー/3月17日)
・『シティリビング』(プレビュー/3月28日号)
・朝日新聞「A+1」関西版(プレビュー/5月2日夕刊)
・「よしもと芸人 おかけんたブログ」(レビュー/4月8日)
http://blogs.yahoo.co.jp/nicevoice_blog/25461446.html
・ブログ「プラダーウィリー症候群(Prader-Willi Syndrome)の情報のメモ」(レビュー/3月29日)
http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20140329
2014-05-25KAMO 12th Meeting 【5/31(土)20:00〜 @阿波座ライズタワー1F マークスタジオ】
2014年5月31日(土)20時~22時30分 (19時半開場)
会場:阿波座ライズタワー 1F マークスタジオ
(大阪市西区江之子島2-1/大阪府立江之子島文化芸術創造センター[enoco]の東隣のマンションです)
トークゲスト:佐藤千晴さん(大阪アーツカウンシル 統括責任者)
参加費:1人200円(フリーソフトドリンク&おつまみ)※ 今回はアルコールの提供はございませんので、ご入り用の方は各自でご持参ください。
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第12回KAMOは、トークゲストに大阪アーツカウンシル統括責任者の 佐藤千晴さんをお招きします。
昨年産声を上げた大阪アーツカウンシル( http://osaka-artscouncil.jp/ja/ )は、大阪府、大阪市が関与する文化・芸術事業に対する評価・提言を行う機関であり、今後の大阪の文化芸術の領域で多様な動きが期待されています。
佐藤さんには、大阪アーツカウンシルのご説明から、佐藤さんが文化・芸術に惹かれていったきっかけ、さらには新聞記者時代からアーツカウンシルの統括責任者に 採用されるまでのエピソードなど、佐藤さんご自身のお考えや人となりも交えてお話しいただきました。
今回の開催場所は大阪府立江之子島文化芸術創造センター(enoco)の東隣のマンション「阿波座ライズタワー」の1階「マークスタジオ」と なっております。
地下鉄阿波座駅8番出口からすぐです。
2014-05-21飛鳥アートヴィレッジ2013 総括文 『「飛鳥」と「アート」の理想的な天秤の支点を探ること』
ttk山中がプログラム・コーディネーターを務めました「飛鳥アートヴィレッジ2013」の成果集がこのたび完成いたしました。
こちらの成果集はttkにて閲覧可能ですので、ご希望の方はお気軽にお申し付けくださいませ。
成果集内にて執筆いたしました当プロジェクトの総括文を以下に掲載しております。ご一読いただければ幸いです。
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「飛鳥」と「アート」の理想的な天秤の支点を探ること
明日香村を舞台とし、10日間の短期アーティスト・イン・レジデンスと成果発表の展覧会で構成する「飛鳥アートヴィレッジ」。各地で近年多数展開されている「地域型アートプロジェクト」の多くと同様に、飛鳥地域にある様々な要素を表現に取り入れることを、主催者側がアーティストに求めることを前提としています。この手法によって地域に還元されるべきものは、現地にかかわる人々に、外部からやってきたアーティストがレジデンスでの活動と展覧会での作品を通じて、今まで表に現れにくかった地域の特徴や個性を提示することだと、私は考えています。
今年度は、平面作品に限定した昨年度の応募基準を撤廃した結果、本来からコンセプチュアルな表現をおこなうインスタレーション(空間構成表現)のアーティストの応募が目立ちました。選抜された5名のアーティストが、10日にわたるレジデンスの間、飛鳥に真摯に向き合いながら飛鳥への解釈を深化させ、展覧会での作品を通じて提示した飛鳥は、昨年以上に飛鳥を抽象化させたアプローチとなりました。アーティストたちと共に考えた作品展のタイトル「宙の土 土の宙」に象徴されるように、彼らは飛鳥時代の史跡や特定の場所といった具体的な要素から離れ、壮大な事象である「空・宇宙」と「大地」に自らの制作テーマを設定しました。このアプローチには、飛鳥のイメージをより本質的かつ根源的なものにまで昇華させるという意図もありましたが、一方でどの地域にも共通しうる要素を提示したことには、いま現在の飛鳥への冷淡なまなざしも含んでいたこともあえて書き添えておきます。
本来、現代美術とは、常々表に現れにくい事象や概念を拾い上げたり、現代の価値観に対しての問いかけや問題提起のきっかけを作り出すものでもあります。今年度の「飛鳥アートヴィレッジ」は、結果としてアーティスト側による自らの表現の堅持を前提に地域との理想的な関与を探り、現代美術の領域が提示するべきクオリティにはなりました。ただ、ここ飛鳥においてこのアプローチが理想的かどうかの答えはまだ見えません。「飛鳥」という本来から地域のブランド力が強いという現地の特性にあって、その反映の主軸をどこに取るのかによって、アーティストの「飛鳥」の表現は大きく変容します。飛鳥“時代”の「飛鳥」と、現代の明日香“村”としての「飛鳥」は、必ずしも一致しないという様相を意識すべきです。「国」と「地域」の両極に位置づけられる昔と今を、現代社会の構造を踏まえながら表裏一体の関係で真摯に向き合えば向き合うほど、そこには純化された相対論が「衰退」というキーワードを誘導してしまう恐れがあります。
すでに歴史と観光資源の枠組みの中で価値が確立している飛鳥時代の諸要素よりも、ここにいま暮らしている人々やその生活および環境に焦点を当てることが、現在の「飛鳥アートヴィレッジ」の目的をより特化させることのできる方策ではないでしょうか。次年度のプログラム構築に際しては、地域側とアート側の交流にあらかじめ特化する手法も選択肢として検討すべきと思います。地域性をより反映させた作品をアーティスト側に求めるのであれば、現状の10日の短いレジデンス期間とアーティストへのサポート体制の調整はもちろんのこと、プログラム内での地域との交流をより推進する前段階として、当プロジェクトの村内での認知の浸透に力を注ぐべきと考えます。それによって、展覧会への来場者も村民の割合を増やす必要があると思います。その足掛かりとして、初めてプログラムとして実施した村民のお住まいに宿泊する「民泊体験」と、参加アーティストの一人の作品が実質的に地元の人々との共同制作になった今年度の2つの実績は、お互いの立場への歩み寄りと、昔と今の飛鳥の印象を両者が共有できた、今後に確実に活かされる成果となったと思います。
地域側とアート側の思惑や主張の間に生じる、双方の価値観の差異は、このプロジェクト形態においては常に付きまとう課題です。両者の理想は常に一本の同じ軸の両極にあり、そのちょうど真ん中でバランスを取る選択は、現実的に不可能です。さらに、昔と今の「飛鳥」の価値のバランスも同様です。両者の支点の位置をどこに定めるかを、主催者である地域側が明確に提示することを期待します。その設定があるからこそ、アーティストのクオリティや、「飛鳥アートヴィレッジ」の果たすべき成果が明確になると思われます。2年目の実績を積み重ね、「飛鳥アートヴィレッジ」独自の天秤を明確に調整すべき段階にあることは確かです。
山中 俊広(2013年度 プログラム・コーディネーター/インディペンデント・キュレーター)
2014-04-28GW期間中の鮫島ゆい展開廊日のご案内
現在開催中の鮫島ゆい展「中空の雲をつかむように」は、5月11日(日)までの会期となっております。
これからGW期間に入りますが、ttkは祝日関係なく木曜~日曜は通常通り開廊いたします。
またGWに合わせまして、臨時開廊日を1日設けております。
4月28日(月)~30日(水) 休廊
5月1日(木)~4日(日) 開廊
5月5日(月・こどもの日) 臨時開廊
5月6日(火)、7日(水) 休廊
5月8日(木)~11日(日) 開廊
5月5日(月)のこどもの日は、月曜日ですが開廊しております。
それぞれ開廊時間は通常通り12時~19時となっております。
鮫島展のオープン日は実質残り9日間となっております。
帰省や旅行などで関西方面にお越しになられる方々も多いかと思います。
くれぐれもお見逃しのありませんよう、多くのみなさまのご来廊をお待ちしております。
2014-04-16Konohana’s Eye #4 小出 麻代 展「空のうえ 水のした 七色のはじまり」 2014年6月6日(金)~7月20日(日)
the three konohana、次回の展覧会のご案内です。
「Konohana’s Eye」シリーズの通算第4弾として、インスタレーション表現を軸に活動する小出 麻代(KOIDE Mayo, b.1983)の個展「空のうえ 水のした 七色のはじまり」を、6月6日(金)~7月20日(日)の会期にて開催いたします。
2014-04-11KAMO 11th Meeting 【4/26(土)20:00〜 @the three konohana】
2014年4月26日(土)20時〜22時30分(19時半開場)
会場:the three konohana(大阪市此花区梅香1−23-23-2F)
トークゲスト:伊藤まゆみさん(神戸アートビレッジセンター)
参加費:1人200円(フリーソフトドリンク&おつまみ)/Slit Bar 世界のビール 各500円(キャッシュオン制)
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1996年にオープンした神戸アートビレッジセンター[KAVC]は、演劇・美術・映像・音楽を中心に、多様な企画を発信する神戸のアートの拠点のひとつとして、その独自性の強い活動に地元のみならず全国各地からも注目を集めています。
KAVCでは、昨年度より「hanaso(ハナソ)」という月例イベントを開催しています。hanasoは、市民、アーティスト、関係者、KAVCスタッ フの交流の場、神戸で活動するアート系関係者とのネットワークづくりの場として、アート、まち、デザインなど様々な領域で活躍するゲストを招くトークサロ ンです。企画者であるKAVCの伊藤さんは、その着想をKAMOから得たそうで、今回はKAMOとhanasoの姉妹関係が初めてタッグを組む機会にもな ります。
伊藤さんには、KAVC(主に美術事業)の紹介から、この1年のhanasoの活動を振り返っていただきます。そして、hanasoから見る、いま現在の神戸・阪神間のアートシーンの特徴や傾向についてもお話いただきました。
【今回の飲食スタイルについて】
今回はお一人200円の参加費で、ソフトドリンクとおつまみをご自由にお楽しみください。そしてアルコール類は、hanasoでは毎度おなじみの彫刻家の 築山有城さんによる「Slit Bar」が提供します。世界各国のビール約10種類が全て1本500円でお楽しみいただけます。
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【今年のKAMOの実施形態について】
大変お待たせしておりましたが、昨年末から少しお休みをいただいておりましたKAMOは、今月から2年目始動となります。
昨年の1年目は、まず大阪のいろいろなアートシーンを知ろうという趣旨で、大阪を拠点に活動する8組の現場の方々をゲストにお招きして、さまざまなお話をしていただきました。今年の2年目は、大阪から関西へと内容の幅を広げて、引き続きさまざまなアートの領域の方々をゲストにお招きして開催いたします。
なお、今年のKAMOの会場は、昨年の会場此花区梅香のOTONARIが先月末で一旦休業することになりましたために、これを機に大阪市内各地を転々とす る渡り鳥スタイルで開催することといたしました。トークは昨年のスタイルをベースに進行しますが、飲食のサービスなどは会場によってその都度変わりますの で、なにとぞご了承ください。
2014-03-31「まよわないために -not to stray-」を振り返って
これまでのttkで開催した4つの展覧会のレビューは、基本的にこの独特のギャラリー空間での「展示」に焦点を当てて、その空間アプローチの独自性や作家によるコンセプトの提示とそこからつながる概念を語るという流れが中心でした。今回の野口卓海さんのディレクションによる「まよわないために –not to stray-」は、その流れで論ずるのではなく、「同世代性/同時代性」を読み解くためにこの展覧会を企画したという彼の意図から見る、次の美術史の文脈創出のためのアプローチに絞り、ここで言及したいと思います。
まず、野口さんが最初に着手したものは今回の4組の作家のセレクトでした。そのセレクトの基準にあるものは、野口さん自身による客観的なまなざしで一定の評価をしている作家であるということですが、一方でこれは主観的とも捉えられます。これは決して批判的なものではなく、明確に価値や評価が大きな歴史的な文脈として確立するのは、早くても30年長くても50年であると私は考えます。(実際に現在の風潮では、「具体美術」や「もの派」の評価軸がようやく落ち着き、次に「関西ニューウェーブ」周辺が、研究者や評論家の間では文脈づくりのターゲットとして向けられているのではと推測します。)つまり、私がttkで若手中堅の作家を取り上げるのも同様ですが、ディレクターとして多くの鑑賞者に共感あるいは共通認識を与えるために、作家や作品や展示に複数の客観的な視点を提示するための仕掛けは作りますが、作家のセレクトにおいてはあくまでも主観的な基準からは逃れられないのです。特に、若い世代を取り上げるという前提においては。
主観的にならざるを得ない作家セレクトの中で、世代というくくりで表現の流れを論じるという点においては、展覧会の期間中に多くの方々からご指摘およびご意見がありました。特に美術史を語る上で世代論は成立しないというご意見が多くありましたが、私もそれについては同意で、野口さんも同じ意見です。美術史は時代のトレンドの集合体と考えますが、若い世代のいま現在の傾向がそのまま一定の評価の中に組み込まれることはありえません。一定の評価とされる、才能のある作家がギャラリーから美術館へとステージを上げる段階は、30代半ばから40代にかけて迎えるケースが多いと思います(もちろん例外も多いです)。いわゆるこの成熟期を迎えるまでは、表舞台で自らの存在をアピールするために、このように自らの世代で徒党を組むような企画で展覧会を提示する必要があると考えます。昨秋から大阪と東京で開催された『MOBILIS IN MOBILI -交錯する現在-』展も、同様の典型例だと思います。ただ存在感を見せ付けるだけではなく、自らの世代の傾向とそのルーツを考察することを目的に、客観的なまなざし、つまり自己反省ができるというスキルを有していることの主張によって、今後大きな美術史の文脈へと自らを組み込むことへの覚悟と誠実さの現れになるものと思います。
そして、今回の野口さんの作家のセレクトには、この80年代半ば世代の傾向のいくつかの側面を提示していました。村上隆、奈良美智の台頭の後に続いたゼロ年代の「現代アート」的アプローチ。新しい概念を生み出すことに迫られてきた様相が、2008年のリーマンショックによるアートバブルの崩壊から徐々に薄れつつありました。物心がつく前に日本のバブルがはじけていた彼らにとっては、さらに学生時代のこのアートバブルも終焉を迎えたのを目の当たりにして、絶対的な価値観や権威的なものに対して冷ややかなまなざしを向けるようになったのもこの世代の特徴だと思います。野口さんはそれらの状況を意識して、ゼロ年代の「現代アート」的な表現から一線を置く態度を示す作家、そしてかつては権威的でもあった「モダニズム」的な主題を取り上げつつも、そこに絶対的な信頼を持たずに淡々とそれを扱うという作家というキーワードの下でこの4組の作家を選びました。もちろん、そこには野口さん自身の美術に対する理想が示されています。
私自身も、野口さんの理想と比較的類似しています。1980年代後半から90年代頭にかけてのバブルと、このアート業界で働いている最中に経験したアートバブル。新しいものが絶対的に良しとされた風潮には、昔からずっと違和感を持っていました。そういう意識の中で、私自身は「ボーダーレス」的な思想に対して、もう一度きちんとしたボーダーを引いてジャンルの再定義の必要性を常に強調しています。そのためにもう一度過去の「歴史」について検討し、それを私たちの時代に照らし合わせることで、一つの時代独自の表現やメッセージが生まれてくるはずと思っています。ここまでは両者の共通項の話ですが、彼らの世代との明らかな違いは、その引用してきた歴史や確かな価値観を強固な信頼軸に置くかということです。私たちのゼロ年代以前の世代は「モダニズム」や「バブル」を知っているので、確固たる権威に支えられて幸せだった時代を知っています。しかし、彼ら以降の世代には、そういう体験をしていないという絶対的な差異があります。一定の信頼を持たずに多くの事象に立ち向かうという態度については、少なくとも今の私には最終的な到達点の想像がつきません。そこにある唯一の手がかりとなるキーワードは、「客観性」の追究のように思います。
そもそも現代美術自体に、社会に対する客観的なまなざしを示す役割があるかと思います。ただ一方で、美術も含めた芸術全般が、これまで政治や権力と隣り合わせであり続けたという歴史的経緯もあります。この両者の矛盾の中で形成された今の現代美術から次の展開はどのようになるのか。世代論で美術史を語ってはいけないとこの冒頭で述べましたが、美術による表現と社会がより接近しつつある昨今においては、自らの世代を客観視することが大きな世界の入口に入るための絶対的条件となっていることに疑いないと思います。10年後の野口さんたち80年代半ば生まれの世代が、どのような蓄積を重ねて、第一線に到達した人間としてどのような次の結論を提示するのかを、引き続き楽しみに注視していきたいと思います。