2014, EXHIBITIONS, PAST
Konohana’s Eye #3 鮫島 ゆい 展「中空の雲をつかむように」
Konohana’s Eye #3
鮫島 ゆい 展「中空の雲をつかむように」
2014年3月28日(金)~5月11日(日)
開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月曜~水曜
会場:the three konohana
オープニングパーティー:3月28日(金)18:00~21:00
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このたびthe three konohanaでは、鮫島 ゆい(SAMEJIMA Yui, b.1988)の個展を、今年2014年のKonohana’s Eyeの第一弾として開催いたします。
学生時代から精力的に発表活動をおこない、地元関西のみならず関東など各地で発表を重ねる鮫島は、現在は絵画による表現を軸に制作を続けています。彼女は京都精華大学で版画を専攻していましたが、当初から版画による単一画面の作品よりも、コラージュの形式による多様な素材を使った表現をおこなっていました。 作品に技術や制作の過程を忠実に落とし込むことのできる版画よりも、操作の域を超えるものや人間の心理や感覚にあるノイズなど、予想外の結果をもたらす余地のある表現に、彼女の関心は向いていたように思います。そのため、学生時代の後半から絵画的表現に移行してからも、キャンバスやパネルの画面に違和感のある素材をコラージュする手法を継続しながら、自らの手や意識の及ぶ範囲とそれを超えていく境界線を確かめるような作品が随所に見られました。
近年から現在にかけては明確なコラージュの表現は影を潜め、純粋な絵画表現が中心となりますが、それでもアクリル絵具による同一画面上に相反するかたちや質感を描くことを続けていきます。鮫島は自らのステートメントで「ホムンクルス」という表現を多用します。錬金術師が人造人間を作るルネサンス期の説話に則って、不完全でありながら生命体を思わせるようなかたちを、複数の要素からなる構成によって画面上に描き出すイメージを持ち続けています。理性的に構成された明確なかたちと、身体感覚に拠った不明確なかたち。これらの対照的な要素を、有機性と客観性を両立させながら単一の画面に収斂させていくことが、彼女の現在の絵画に向き合う主題および態度となっています。彼女なりのコラージュの純化と言えるでしょう。
当展は、これまでの鮫島の作風の変化と展開に一貫してきた、意識と感覚を発生の源とし両極の理想的な構成へと進める、自らの造形表現の原点を再考することを主題とします。 現在の彼女の主たる表現である絵画作品では、彼女のコラージュの概念に残されていた素材感や感情的なものをさらに強く排除し、彼女の二極化されたかたちとその構成を純粋な絵画のフォーマットに落とし込むことを強く意識づける内容となります。本来の芸術表現に必要とされる現実と架空の2つの要素を冷静に並列 させつつ、双方の強弱による構成の多様性を提示することにより、人間の視覚と想像の接触による別次元のかたちの世界を私たちに意識させていきます。
加えて、彼女の造形のルーツを更に追究するための重要なアプローチとして、昨年のトーキョーワンダーサイト本郷(東京)の個展でも発表した、異素材を組み合わせた立体作品の新作も展開します。彼女が学生時代から手がけていたコラージュに原点回帰する表現と位置づけ、実体のある物質や質感から不確かなイメージを導き出す過程を提示するものです。現実感の強い三次元による造形では、一方でかたちの認識が人間の視覚に頼らざるを得ないという事実にも直面します。自ら操作可能な世界として位置づけられる絵画表現の前段階にある、現実との向き合い方とその解体の過程を、彼女の立体作品を通じて認識していただければと思います。
当展のタイトル「中空の雲をつかむように」は、実体や境界が不明瞭な空間の中に明確なかたちのないものを見いだしていくという意味です。雲のように有機的かつ生命感のあるかたちを見つけ出そうとしながらも、感情や表情がなくかつ実体の有無を捉えきれないかたちを同時に拾い上げていく、自らの表現に向き合う鮫島の姿勢を表しています。視覚と認識で構成される現実界の存在を前提としながらも、私たちの思考や感情が混在した世界には、数多くの曖昧な意味やかたちが各所に散らばっています。これらの確かさと不確かさを鎖で繋げる行為に、私たち個々の小さな世界を把握するためのひとつの答えが潜んでいるように思います。この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
《形影の家》 アクリル、キャンバス 65.2 x 65.2 cm 2014 [当展出品作品]
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