REVIEW
「Beyond the Screen」はじまりました!
ttkでは2013年春の開廊時以来、2年半ぶりの個展となる伊吹拓さん。3会場同時開催というボリュームたっぷりの作品量はもちろんのことですが、2年半前の個展からの流れと展開を見せるというシンプルなところに、本展の重点は置かれています。
先のttkでの個展からの2年半、各地での精力的に発表で継続してきた伊吹さんの絵画への向き合い方のポイントは3つあります。ひとつは、前回のttkでの個展の時の自発的かつ積極的なストロークの展開です。伊吹さんのコンセプトの主軸には、人間の手によって操作が可能な領域と不可能な領域の双方を、画面上に作り出すというものがあります。ただ、今回の伊吹さんの新作には、新たなマチエールや筆致が織り込まれました。このことは伊吹さんにとって、絵画の画面へのより積極的な関与の表れと言えるでしょう。
そして、2つ目のポイントは、自然環境との向き合い方です。前回のttkの個展での座敷での作品のあと、昨年の八木保育園の園舎壁画や木津川アートでの展示でも、時間の経過と共に変わりゆく自然現象を自らの絵画作品に向き合わせる展示を続けました。このアプローチは、自らの先にある操作不可能な領域への積極的な関与とも言えるでしょう。ttkの屋内空間での、窓から差し込む陽光の変化を作品に取り込むことは前回に引き続いて実践しながら、今月末の「見っけ!このはな」での屋外展示では、陽光のみならず雨風といった気象現象とも向き合うことになります。
そして最後に、他領域の人々とのコラボレーションにも、意識的に自らの手から離れての作品への作用を作り出す意図があります。今回のttkでの展示と、「見っけ!このはな」での屋外展示の双方には、随所にPOS建築観察設計研究所さんの手と思考も含まれています。伊吹さん本人による作品へのアプローチの強度もありながら、外的なアプローチも複数の方向から強めている今回の一連の作品群。従来から取り組んでいるこれらのアプローチの関係性から、最終的には絵画そのものに立ち戻っていく伊吹さんのプロセスと思考を、ぜひじっくりと本展で感じ取っていただければと思います。
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