REVIEW
「On」はじまりました!
ttkでは初めての個展となる乃村拓郎さん。昨年のttkのDirector’s Eyeでご存知の方もおられるかと思いますが、これまでの発表回数も場所も限られていましたので、おそらく初見の方が多い展覧会となるかもしれません。
近代に欧米から「美術」の概念が日本に流入して、当時までの日本のさまざまなものづくりの活動がその基準によって領域分けされていきました。制作者は自らの判断で、「美術」とそれ以外のもの(主に「工芸」)として制作していきますが、それを享受する側にとって「美術」であるか否かの判断はいかにしてなされるのでしょうか?乃村さんのコンセプトは単刀直入に言うと、その「美術」の領域の一つである、「彫刻」の定義を再考することにあります。
これまでの乃村さんは、1つの展示で1つの論点を考察するシンプルな展示を続けてきましたが、ttkの個展では複数の論点を一度に提示して、さらに論理的にその問いに向き合う形式になっています。本展でも「彫刻」のイメージから少し外れて、立体作品と平面作品が混在する構成になっていますが、彫刻の制作(または認識)のための行為と思考のプロセスを明確に抽出することを目指しています。本展を読み解く主なキーワードは、「二次元と三次元」、「距離感」、「工芸/置物と彫刻」。彫刻をめぐる複数のベクトルの両極が併存しているような内容になっていますので、どこのバランス点で「彫刻」の認識が生じるかどうか、表層的なフォーマットの奥や周辺にある諸要素から各自の基準を見出していただければと思います。
なお、本展が2015年のttkの最後の展覧会となります。本展はオープニングパーティーの代わりに、クロージングパーティーを最終日の前日12月26日(土)に開きます。年末の忙しい時期ではありますが、忘年会の感覚でぜひお越しくださいませ。
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