REVIEW

「5時の点は白と黒」はじまりました!

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2014年春以来、ほぼ2年ぶりとなる鮫島ゆいさんの個展です。ttkでは2年前の個展から昨夏のART OSAKA 2015での新作発表と、表現手法を固定させながらも着実な成長を見せてきた鮫島さんにとって、本展は一連の地固めの成果を提示する機会です。

本展も前回の個展と同様に、平面の絵画作品と立体作品を混在させた構成にしていますが、彼女の表現においての主軸の一つである「コラージュ」のアウトプットに変化が生じてきています。鮫島さんの中で表現・制作のプロセスはさらに固定化されていながらも、単一の作品を構成する要素は近年の作品よりもさらに絞られて、全体的に純化された傾向が見られます。

そして、鮫島さんにとっての「リアリティ(現実感)」への回答にも前進が見られます。「画質の荒い映像を、次々とコマ送りで見た時に残る、実像と虚像の隙間のようなもの」という、本展の趣旨文内の鮫島さんの言葉に象徴される世界観がより意識的に追究されて、作品を構成する個々のモチーフ(かたち)の選択と、それらで単一の作品を組み立てるための基準が、ますます明確になってきています。個々の作品タイトルにもその傾向が現れています。視覚による認知を軸とした彼女の現実世界との向き合い方を、本展の作品群と照らし合わせながら、現代の多様化する「リアリティ」の概念を考える機会にもなればと思います。

現実界での視覚とそれに寄り添う感覚との関係を基点に展開される、鮫島さんの表現の広がりと深化。この2年間の彼女の活動の積み重ねに裏打ちされた展示になっているはずです。本展をじっくりくまなくご覧いただき、鮫島さんの世界観の一貫性と、コンセプトの深まりによって変化する要素の両軸を読み取っていただければ幸いです。

また、ttkの通常スタイルの企画としては、本展が今年最初の展覧会となります。今年の5企画はすべて個展で構成されていますので、今年はひとりひとりの作家により一層丁寧に向き合ったプレゼンテーションを心がけたいと思っております。


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Posted on 2016-02-16 | Posted in REVIEW |

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