REVIEW
「ライオンの家」はじまりました!
今年2016年のttkのトリを飾る展覧会は、ttkでは初めてとなる笠間弥路さんの個展です。
本展の作品の大半には、現在自らの手で改装を重ねている笠間さんのアトリエ、自称「Lion House」から取り外した廃材や、その周辺で拾ったものが使われています。作品を制作する上での造形行為と、自らの制作の環境としての「Lion House」を作る行為が並行して行うことで、作品制作の行為と日常および生活の行為が等価でありかつ共存する状況を展示全体で表現しています。本展では手のひらサイズの作品が中心に構成されていますが、両者の概念を意識的につなげていくことで様々な要素が作品に取り込まれ、実際の作品のボリューム以上にその重みや深みを感じていただけると思います。
また、笠間さんのさまざまな素材をつなげることで作品として成立させる手法には、素材と素材の間にある隙間や空間が強調されていて、それが作品や展示空間の造りの随所に見られます。単一の作品内の素材同士の関係性を浮かび上がらせるだけではなく、個々の素材が持つ重力や素材感、さらには展示空間全体で捉えたときの作品同士の関係性にも触れることができます。造形行為を軸に、日常をはじめとした美術以外の様々な事柄を広く巻き込むためのフォーマットを構築していく、そのような意思が展示全体に一貫して見られます。
本展は、個々の作品内での素材の関係、空間全体でみる作品間の関係、ミクロとマクロの視点がふんだんに含まれた構成になっています。一般的な展示以外での活動が目立ったここ数年の笠間さんの思考を、スタンダードな展示の中で整理・集約させ、現在の彼女の方向性を明確に提示した展示になっています。静謐感で統一された展示構成と空間の中で、一つ一つの作品が小さな声でささやき合っているような印象を感じます。一つ一つの作品に耳を傾けるようにご覧いただいて、緊張感と温かみ、空間に漂う対照的な空気感も合わせてお楽しみいただければ幸いです。
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