REVIEW

<Physical Side>はじまりました!

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ttkでは3度目となる今回の加賀城さんの個展は、ttkとしても初めての枠組みが随所に盛り込まれた企画です。現存作家としては初めての旧作を中心とした作品構成、そして前期後期に分けたttkと、ART OSAKAでの新作展示、それぞれ異なる作品による3種類の展覧会で構成する形式も初めての試みです。

加賀城さんと言えば、染色の技法を使って多種多様な表現をする作家、または美術と工芸のはざまを表現する作家として認識されている方が多いと思われます。その多様性が特徴となっている作家性を、本展ではこれまでの加賀城さんの作家活動を、「Physical/身体性」と「Flat/平面(性)」の2つの観点から分析していくことが狙いです。

まず現在開催中の前期展〈Physical Side〉では、「Physical/身体性」をキーワードに1999年から2017年までの14点の作品を選び、7月9日(日)まで展示しています。

加賀城さんが20代の頃に特に取り組んだ表現手法は、布の上に置いた糊をスキージー(シルクスクリーンを刷るときに使う大きなヘラ)で引きずっていき、その後染色または脱色でその痕跡を布上に現わすというものです。何らか具体的な図像を描くものではなく、加賀城さんの身体の動きと布の接触による現象的な表現を目指したものと言えます。さらに、自らの指の動きを布上の糊に反映させる作品も頻繁に作られていきますが、染色表現と身体の関係を思考する加賀城さんのその後の主題は、両者の直接的な関係を越えて、染色表現の構造と視点を多様化していく方向へ進んでいきます。

身体そのものを反映させた布としての作品は、そこに力学、触覚、空間への視点が加わっていくことで、人間の身体のスケールを再認識するものとしても作用していきます。その加賀城さんの視点と方向性の中心にあるものは、染色で何を作っていくのかというよりも、染色とは何かという起点から、素材と技法の細部にわたる観察・研究が自然と作品として成立していくプロセスであろうと思います。前期展は、その身体性の主題の起点からその後の展開を、18年間の14の作品で概観する構成としています。

また一部の作品には、発表当時の展示方法と異なるものもあります。さらに新作も1点含まれており、ただ過去の作品に触れるだけではなく、当時から現在に至る加賀城さんの思考の変化にも意識を傾けていただければと思います。

そして前期展の終盤には、7月7日(金)~9日(日)に開催のART OSAKAにて、加賀城さんの新作展示が重なります。今回の新作は、この本格的な自らの振り返りの機会を踏まえたものとなりますので、加賀城さんの本展への1つの回答として、乞うご期待ください。

来月7月15日(土)から始まる、「Flat/平面(性)」をキーワードとした後期展でも同様にテキストを書かせていただき、最終的にはかたちで残るもので本展の成果をまとめていきたいと考えています。


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Posted on 2017-06-22 | Posted in REVIEW |

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