2015, EXHIBITIONS, PAST

Director’s Eye #3 「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」

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・「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」 展示風景

・「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

 

 

Director’s Eye # 3
「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」
2015年1月10日(土)~3月1日(日)

キュレーター:長谷川 新
出品作家:荒木 悠上田 良折原 ナナナ柄澤 健介小濱 史雄佐伯 慎亮末永 史尚

開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月曜~水曜、1月17日(土)~28日(水) (※ ただし1月12日(月・祝)は開廊)
会場:the three konohana

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《関連イベント》 (※詳細はこちら
会場:PORT http://shikanjima-port.jp/
大阪市此花区四貫島1-6-6 [四貫島中央通商店街内]
(the three konohanaより徒歩5分)

・レセプション
1 月10 日(土)19:00~21:00
入場無料(ドリンクキャッシュオン制)

・めりカフェ「抹消の痕跡をたどる──ルネサンス美術における上塗りと未完成」
特別講師:古川萌
2 月1 日(日)18:00~20:00
入場料500円+ワンドリンク注文制

Ustream配信の様子(録画):http://www.ustream.tv/recorded/58311480
当日の配布資料(改訂版)→[PDF]
当日のスライド資料→[PDF]

・荒木悠作品上映会
ゲスト:菅原伸也 (※トークのレジュメはこちらからダウンロード可能です→[PDF]
2 月14 日(土)18:00~21:00
入場料500円

・「SAVE THE CLUB NOON」上映会
ゲスト:宮本杜朗監督
2 月15 日(日)18:00~21:00
入場料500円
http://savetheclubnoon.com/

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このたびthe three konohanaでは、Director’s Eyeの第3弾として、キュレーター長谷川 新(Arata Hasegawa, b.1988)の企画によるグループ展「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」を開催いたします。

2013年よりキュレーターとしての活動を開始した長谷川は、同年にチーフキュレーターとして参加した「北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI -交錯する現在-」にて、国内のアートシーンに頭角を現すこととなりました。同展において彼は、自らと同世代である80年代生まれの作家の動向への深い考察のみならず、新進の評論家を多数巻き込み、かつバイリンガルで構成した展覧会図録の出版、さらには東京と金沢への巡回展も成功させるなど、キュレーターとしての仕事を体系的にかつ細部にわたって展開しました。

また2014年秋に京都で企画した「無人島にて―「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション」では、前年の企画とは対照的に、彼自身が生まれていない時代の表現傾向を取り上げ、そこに新たな解釈の可能性を提示した意欲作として、各所で大きな反響を巻き起こしました。卓越した知識量と、歴史を基盤とした洞察力に裏打ちされた彼のキュレーターとしての活動には、多くの美術関係者から注目が集まっています。

本展では、長谷川の視点は再び同世代周辺の動きへと向かいます。近年の美術におけるジャンルの横断や表現・素材の多様性に着目し、それらを明確に分類するのではなく、その境界周辺にある概念や価値、またはその距離感への考察をおこなうものです。
ゼロ年代以後の表現に通底するゆるやかな価値観への接近が期待されます。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

the three konohana  山中 俊広

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OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR
Curator:Arata Hasegawa

「視野の縁でなにが起きているかを知っているだけでは、我慢できなくなりかける。目にはいる部屋の光景はつねに一分の隙もなく、それがまた衝動を煽った。ここまで来ると強迫観念だ--どんなに早く首をまわしても、まわりで起きていることはこれっぽっちもわからない…。」
グレッグ・イーガン『順列都市』

「彼は目を上げて、その翼あるものを見た。見たと言っても両の目にあふれていた玉葱の涙を通してで、したがって数瞬のあいだ突っ立って見つめていたのだった、 なぜならば涙のために奇妙なレンズを通して見たみたいにそれの輪郭がふくれ歪んでいたからで、睫毛が乾くようにと目をすがめた、そしてあらためて見つめた。」
アントニオ・タブッキ『ベアト・アンジェリコの翼あるもの』

「舞台の上では行為が演じられるか、それとも、おこなわれたことが報告されるかの、いずれかである。」
ホラーティウス『詩論』

 

タイトルとなっている英文は、アメリカ、カナダ、それとインドを走る乗用車のサイドミラーについている警句だ。

「鏡ごしに見えるものは、見かけより近くにある」

そのことばには確かにソリッドな感覚がある。速度を伴っている。
ちょっとした重力も感じることができる。
生死に肉薄した、物質的でミニマルな警句。
そこから、「鏡ごしに」という部分を削り落とす。

本展は7名の作家の、展覧会だ。
荒木悠、上田良、折原ナナナ、柄澤健介、小濱史雄、佐伯慎亮、末永史尚。
僕はここで頻出する修辞を用いることを執拗に拒む。

よくある修辞1。「彼らは一見すると全く異なる作風です。しかし−−」
よくある修辞2。「−−という素材/メディウム/ジャンルの独自性を追求し」

私たちは互いの「近さ」をもっと許容しても良いのではないか。
あるいは今観ているそれが別の似たなにかであり得ることについて、考えを巡らせてみることができるのではないか。

だからこの展覧会は、「近さ」について考えられるようにした。

作品は伸びたり縮んだりするし、展覧会ですべてを見せる必要もない。
もとよりそれは、絶えず遅れている。

展覧会は鑑賞者の少し後方を走っている。(行き先は異なれど少なくとも今は同一方向に)
鑑賞者は鏡ごしにそれを見る。
それは見かけよりもずっと、近くにある。


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