2015
2015-11-13Konohana’s Eye #10 乃村 拓郎 「On」
Konohana’s Eye #10
乃村 拓郎 「On」
2015年11月13日(金)~12月27日(日)
開廊時間:木・金曜 15:00~21:00/土・日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月曜~水曜
会場:the three konohana
クロージングパーティー:12月26日(土)18時~
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このたびthe three konohanaでは、乃村 拓郎(Takuro Nomura, b.1986)の個展を開催いたします。2014年の1月~3月に弊廊にて開催したDirector’s Eye #2「まよわないために -not to stray-」(ディレクター:野口 卓海)の出品作家の1人として参加しましたが、弊廊での個展は初めてとなります。
京都市立芸術大学では学部・大学院を通じて彫刻を専攻した乃村ですが、立体の枠組みや単一の素材にこだわらず、多種多様な表現を続けています。近年では年1回のペースで個展を積み重ねながら、彼の表現主題の各論を地道に実験・構築してきたスタンスを踏まえて、本展ではここ5年にわたる彼の制作活動を総体的に捉える内容となります。
乃村の制作の起点には、「彫刻」と、ものの「存在」についての考察があります。近代に成立した日本の美術における「彫刻」という領域を考えるにあたり、彼は「日本的」な要素を拾い上げることに意識を傾けています。その代表的なものが「工芸」です。彼のこれまでの作品には、工芸的な形状をした「彫刻」作品が多数見られます。素材が持つ特性から立ち現れる形状や質感に、自らの制作行為としての身体感覚と思考を重ね直接的に作品化していくプロセスに則った表現を続けています。それによって、「工芸」と「彫刻」それぞれの認識の差異を確かめ、概念を深化、展開させることで、「造形」することの新たな可能性を追求しています。
また、乃村は平面表現にも積極的に取り組み、写真やガラス板を使った作品も展開しています。現実の「存在」を間接的に置き換える、「写りこむ」ことのシステムと特性から、「存在」を考えるプロセスとして位置づけています。人工的な写りこみと、自然光や反射といった自然現象から生じた写りこみを併存させて、間接的なイメージが「存在」の認識にいかに左右しているかを提示するものです。間接的であることで、実体のイメージとの差異や矛盾がより露わになり、1つの「存在」の表裏として提示されることによって、その認識を高められると彼は考えています。また立体的な要素や形状を平面に変換させることによる、「二次元/三次元」の単純な対立軸以外の接点を探るアプローチとしても用いています。
本展では、工芸性、平面と立体の関係性、自然現象を通じて、ものの「存在」と「彫刻」の定義を多角的に捉えつつも、乃村の思考を総体的に構築する内容となります。複数の作品や異なる素材・表現媒体の間にある対照関係が、鑑賞者の知覚に触れて、ひとつひとつの根拠が組み合わされて論理性を増すことによって、ものの「存在」の認識や「彫刻」の範囲および境界線を探ることを目指します。
近年、芸術のみならずさまざまな領域の横断や変容が進むことは、時代の流れにおいて当然の理でもあります。進歩の背後にある従来の価値基準や、現在に至るプロセスを確かめ、見直していくことの必要性を改めて認識し、いまの私たちの知覚を通じて受容されていく膨大な情報から、その本質を見極めていく必要性の気づきにもつながれば幸いです。この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
《hai》 橡、胡粉、膠 8.5 x 16.0 x 11.5 cm 2015 [本展出品作品]
《Cast Shadow“ Vase”》 樹脂・墨 29.0 x 29.0 x 9.0 cm 2013 [撮影:長谷川 朋也 ]
《floor to floor》 ピグメントプリント、パネル、床 273.0 x 181.0 x 30.0 cm 2014
《光速の素描“ brass vibration”(レンズ)》 真鍮 15.0 x 15.0 x 5.0 cm 2012
2015-09-04Konohana’s Eye #9 伊吹 拓 「Beyond the Screen」
・伊吹 拓 「Beyond the Screen」 展示風景
Konohana’s Eye #9
伊吹 拓 「Beyond the Screen」
2015年9月4日(金)~10月18日(日)
開廊時間:木・金曜 15:00~21:00/土・日曜 12:00~19:00
(※本展より、平日の開廊時間を変更いたしました)
休廊日:毎週月曜~水曜
会場:the three konohana
レセプションパーティー:9月26日(土)18時~( ※「見っけ!このはな 2015」会期初日での実施です。)
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【関連企画】
[見っけ!このはな 2015] 連携企画
伊吹拓&POS建築観察設計研究所 「Beyond the Screen in the open air」
日時:9月26日(土)、27日(日)[※以後も個展期間中の10月18日(日)まで展示を予定しています。]
会場:ね どこ(ttkから徒歩3分の空き地。詳細な場所はこちらをご覧ください。)
the three konohanaで個展「Beyond the Screen」を現在開催中の伊吹拓が、此花を拠点に活動するPOS建築観察設計研究所とコラボレーションして、絵画作品の屋外展示をおこないます。
伊吹の大きな絵画作品にPOSが制作した構造体を組み合わせて、住宅やマンションに囲まれた細長い空地に設置します。陽と空気のうつろいに触れ、そして此花の下町の景色と重なる、合作作品と「ね どこ」の空間をお楽しみください。
見っけ!このはなHP http://www.mikkekonohana.com
「伊吹 拓 展 Beyond the Screen – on paper works」
日時:9月8日(火)~27日(日) 12:00~17:00 月・金曜日休廊
会場:Note Gallery(573-0057 大阪府枚方市堤町8-15 Tel:072-396-0708)
伊吹が在住する地元枚方市のNote Galleryにて、個展を同時開催いたします。オイルオンペーパーの新作をご紹介いたします。
Note Gallery HP http://notegallery.jimdo.com
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このたび the three konohanaでは、伊吹 拓(Taku Ibuki, b.1977)の個展を開催いたします。弊廊では、2013年の開廊時の個展以来2年半ぶりの発表となります。
これまでの作家活動において伊吹は、一貫して抽象絵画による表現に取り組んでいますが、屋内の一定の環境に絵画を配置する一般的な展示手法から逸脱した表現にも精力的に挑み続けています。一昨年の弊廊での個展では、和室内に水平に置いた巨大なキャンバスに随時加筆を加えていく展示を、約2か月の会期中継続して実施いたしました。自ら積極的に画面を描き変えていく行為と共に、時間と天候によって断続的に変化し続ける陽光がまだ乾ききっていない画面に触れることにより、常に固定化されない画面を見せ続けた展示は、絵画が生み出しうる視覚的「現象」を提示し、私たちに「絵画の体験」としての印象を強く与えました。
この流れを受け継いだ昨年は、新園舎の屋外壁面を描いた姫路市の八木保育園のコミッションワークを春に完成させ、古いビルの1階正面の大きなガラス張りの空間に自らの作品を巨大な壁画のように配置し、ガラス面から溢れんばかりに差し込む自然光と向かい合わせて展示した秋の「木津川アート2014」と、屋外を意識した発表が続きました。屋外や太陽の光と、自らの絵画作品との関係性についての彼の興味と考察は、さらに深まりを見せています。
本展では、伊吹の抽象絵画としての画面の追究は継続した上で、屋外および太陽の光と向き合う試みを、さらに積極的に実践いたします。弊廊の自然光が差し込む2部屋の展示空間の特性を意識した全て新作のキャンバス作品での発表に加えて、此花区梅香・四貫島エリアの秋の恒例イベント「見っけ!このはな 2015」[会期:9月26日(土)、27日(日)]と連動して、屋外での作品展示もおこないます。弊廊の空間の施工を担当し、昨年の「木津川アート2014」でも彼の展示設営をサポートした、株式会社POS建築観察設計研究所の技術協力を得て、絵画と建築のコラボレーションによる作品を屋内外で展開いたします。
伊吹が「抽象絵画」という手法を通じて常に考えていることは、画面に絵具が定着してイメージが固定されることからの逸脱と、そこから派生していく視覚を通じた絵画の解釈の可能性です。彼が積極的に画面上に描き込んだ油彩による色や筆致を、筆洗油で洗い流す行為によって画面を構築する彼独自の手法は、自らの手で操作不可能な領域を作り出すために取り入れたものです。展示においても、常に自らの画面のイメージが固定されない自然現象が作用する環境に、ためらうことなく作品を晒していくことに努めてきました。そこには、人間の人智が及ばない領域が存在していることの気づきを与え、その領域から人間としての進歩と、それに対する謙虚さの両極的な意識に向き合う必要性をも考えさせられます。歴史上最も確立された美術のカテゴリーの一つである絵画というフォーマットを媒体に、いかに固定概念を揺るがしながら、「流動的な絵画の画面」が引き出していくあらゆる価値観に、彼が手がける本展の屋内外二つの展示会場へのアプローチを通じて、思考を深めていただければと思います。
また、本展の会期中には、伊吹の住む地元、大阪府枚方市のNote Galleryにて、紙を支持体にした作品で構成する個展も開催いたします。彼の作品が2つのギャラリー空間と屋外で、それぞれ異なる3つのアプローチの作品群が同時に展開される、彼にとってもこれまでで最も大規模な一連の発表の機会となります。伊吹の力作の数々を、この機会にぜひ全てご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
[上] 《flow compose #1》 [下] 《flow compose #2》 共に 油彩・綿布 80.0 x 116.7 cm 2015 【本展出品作品】
伊吹 拓 展「“ただなか”にいること」展示風景(the three konohana、2013)[撮影:長谷川 朋也]
八木保育園 新園舎壁面(兵庫県姫路市、2014) [撮影:高原ようか]
「木津川アート 2014」展示風景(京都府木津川市 NTTビル、2014)
2015-06-05Konohana’s Eye #8 森村 誠 「Argleton -far from Konohana-」
・森村 誠「Argleton -far from Konohana-」 展示風景
Konohana’s Eye #8
森村 誠 「Argleton -far from Konohana-」
2015年6月5日(金)~7月20日(月・祝)
開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00 (※ 7/3(金)~5(日)は12:00~18:00)
休廊日:毎週月曜~水曜、7月2日(木)
会場:the three konohana
オープニングパーティー:6月5日(金)18時~
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このたびthe three konohanaでは、Konohana’s Eyeシリーズの第8弾として、森村 誠(Makoto Morimura, b.1976)の個展を開催いたします。
森村は、書籍や新聞、チラシなどの印刷物とそれらに記された情報を素材に、現代の情報社会と人間の関係性を様々な角度から浮かび上がらせる表現を、これまでに多数展開してきました。印刷物上の文字を一定のルールの下で修正液で消したり、カッターで切り取ったりなどの行為の蓄積を提示することによって、現代に生きる私たちが膨大な情報に取り巻かれ、それに左右され続ける状況を、彼の冷静なまなざしを通じて曝け出しています。広く社会に共通する概念や価値観を提示する一方で、作品における文字および印刷物の選択は、彼個人の動機や体験によるものが多いことが特徴です。情報そのものに対して一定の距離感を保ちながら、各人の判断および取捨選択に重きを置いていることも、彼の表現の一貫性であると思います。私的で小さな世界を起点に、はなはだしい手数の反復作業を作品に積み重ねていく彼の姿勢は、文字通り「情報の海に溺れる」現代の日常に真摯に向き合うことが、私たちの遠くにある未知の知識や価値観の獲得への足掛かりでしかないということを主張しているように思います。
本展では、森村の従来の素材と行為の選択はそのままに、「架空の都市」を弊廊の空間内に作り上げていきます。本展のタイトルに用いた「Argleton(アーグルトン)」は、2008年にGoogleマップ上で発見された実在しないイギリスの町として知られています。「Argleton」が出現した原因は諸説ありますが、この架空の町がGoogleマップに現れた後に、現地の店舗などの情報を不特定多数の人間が書き加えたことにより、町の存在に現実味を帯びていった経緯からも、私たちが固定概念的に捉えがちな情報の客観性の不確かさが露わとなった事例でもあります。この「Argleton」のような状況を、彼の作品制作のルールに則って生み出すために、ここ大阪を中心とした関西圏のさまざまな印刷物に掲載されている地図を作品に活用します。しかし今回のアプローチは、これまでの彼の情報への向き合い方とは一線を画します。文字選択による読み替えを通じて情報の本質的要素を追究してきたこれまでの彼のアプローチから、素材としての紙媒体そのものの意味やそこに書かれた情報そのものを積極的に変容させていく、彼の表現の新たな展開となります。
弊廊のある大阪市此花区の周辺エリアは、ここ数年新たなアート系のスペースや施設が続々と開かれる一方で、活動を停止したり閉鎖するスペースもあり、地図情報は毎年のように改編され続けています。大阪の中心エリアとして知られるキタエリアや天王寺エリアも、ここ10年の再開発で街の風景は大きく様変わりしました。さらには、本展の開催前には住民投票によって最終的な方針が固まることになりますが、大阪都構想の実施の可否によって大阪市の枠組みが変わると共に、地図の情報が近い将来大きく書き換えられる可能性もあります。情報に触れる場所によって変化するタイムラグとリアリティの強弱に、政治や経済によって近年加速する社会構造の変化もあいまって、私たちを幾重にも取り巻く現代の情報は、その不確かさを許容することを前提とせざるを得ないものとなっています。現実と架空、または虚構との間を行き来し続けている日常を振り返りながら、大阪の情報を中心に森村が作り出していく「架空の都市」を目の当たりにして、これからの情報との向き合い方に心を巡らせていただきたく思います。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
《OTW_1》[部分] 地図、修正液、糸、針、刺繍枠、布 55.0 x 52.0 x 1.0 cm 2015 【本展出品作品】
《Airmailed Stamps (Promised Land)》[部分] 使用済みの海外の切手、針、糸 2015 [写真提供:川崎市岡本太郎美術館]
《Daily Hope》 修正液、新聞紙、アクリル板 2012 [撮影:TOKIO OUT of PLACE]
2015-04-03Konohana’s Eye #7 加賀城 健 「Essential Depths」
Konohana’s Eye #7
加賀城 健 「Essential Depths」
2015年4月3日(金)~5月17日(日)
開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月曜~水曜 (※ 5月4日(月・祝)は開廊)
会場:the three konohana
オープニングパーティー:4月3日(金)18時~
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このたびthe three konohanaでは、加賀城 健(Ken Kagajo, b.1974)の2年ぶりの個展を開催いたします。Konohana’s Eyeシリーズでは初めての2巡目の個展となります。
一昨年の弊廊での個展では、ここ10年の加賀城の作家活動の集大成を提示するものとなりました。複数の染色技法によって生み出される色彩と、支持体としての布が持つ平面性と素材感。それぞれに生み出される多様な要素を、カーテンや屏風、反物など、あえて工芸性と実用性が強調されたフォーマットへ反映させる内容を軸に展開しました。視覚を通じて素材と色彩が誘導する触感的イメージと、弊廊の独特な空間を駆使して、平面性と空間性の間を断続的に行き来させる感覚。染色の特性を忠実に抽出し、それを人間の一般的な感覚の琴線に触れながら引きずり出していくような彼独自のプロセスが、工芸と美術の狭間のフィールドで明確に表に現れた機会となりました。
2年ぶりの個展となる本展では、染色そのものにいかに本質的な深度を作り出していくことに取り組みます。これまで加賀城がこの課題に取り組んだ時のアプローチでは、巨大な布での作品や作品周辺の要素を巻き込んで空間を包み込む手法、または染めた布の上に別の素材を乗せることによるレイヤーの重層化で対応していました。また、支持体である布に定着したイメージである「柔らかさ」と「軽さ」に対して、布を壁面などに強く張る手法などによって、時折そのイメージを裏切る作品を制作してきましたが、本展ではこのアプローチへ本格的に進むことになります。
加賀城はこの課題に立ち向かうために、「フレーム」と「ズレ」の概念を本展の作品と空間構成に導入します。しかし、作品としての境界を明確に定める「フレーム」は、絵画的という印象も含めて、表現自体を硬直化させてしまう恐れがあります。また「ズレ」も同様に、精密さの放棄や不安定の典型であると同時に、「フレーム」とは相容れない真逆の概念と捉えることもできます。あえて矛盾するこれら2つの概念を受け止める理由は、私たちの視点をさらに染色の中心と細部へ深く誘導するためです。逆もまた真なりの発想から、規定された範囲とそこからはみ出そうとするノイズを把握することにより、作品そのものの強度を物質的にも概念的にも高めることが可能だと考えます。枠組みや固定概念を受け入れながらも、それらを疑いかつ抵抗する姿勢をもって、彼は新たに染色表現の可能性を求めていきます。
絵画のフォーマットと比較される染色の画面に、インスタレーションと比較される染色の空間。改めて染色自体が、美術のフォーマットに対してどこまで自立可能な強度と深度を構築することができるか。挑戦的な彼の作品および空間とじっくりと向き合っていただきたく思います。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
加賀城 健 展「ヴァリアブル・コスモス|Variable Cosmos」展示風景(the three konohana・大阪、2013)[撮影:長谷川朋也]
加賀城 健 展「ヴァリアブル・コスモス|Variable Cosmos」展示風景(the three konohana・大阪、2013)[撮影:長谷川朋也]
「Styling Art Exhibition ドレッシンググリーン」展示風景(阪急メンズ大阪、2014)
2015-01-10Director’s Eye #3 「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」
・「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」 展示風景
・「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介
Director’s Eye # 3
「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」
2015年1月10日(土)~3月1日(日)
キュレーター:長谷川 新
出品作家:荒木 悠、上田 良、折原 ナナナ、柄澤 健介、小濱 史雄、佐伯 慎亮、末永 史尚
開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月曜~水曜、1月17日(土)~28日(水) (※ ただし1月12日(月・祝)は開廊)
会場:the three konohana
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《関連イベント》 (※詳細はこちら)
会場:PORT http://shikanjima-port.jp/
大阪市此花区四貫島1-6-6 [四貫島中央通商店街内]
(the three konohanaより徒歩5分)
・レセプション
1 月10 日(土)19:00~21:00
入場無料(ドリンクキャッシュオン制)
・めりカフェ「抹消の痕跡をたどる──ルネサンス美術における上塗りと未完成」
特別講師:古川萌
2 月1 日(日)18:00~20:00
入場料500円+ワンドリンク注文制
Ustream配信の様子(録画):http://www.ustream.tv/recorded/58311480
当日の配布資料(改訂版)→[PDF]
当日のスライド資料→[PDF]
・荒木悠作品上映会
ゲスト:菅原伸也 (※トークのレジュメはこちらからダウンロード可能です→[PDF])
2 月14 日(土)18:00~21:00
入場料500円
・「SAVE THE CLUB NOON」上映会
ゲスト:宮本杜朗監督
2 月15 日(日)18:00~21:00
入場料500円
http://savetheclubnoon.com/
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このたびthe three konohanaでは、Director’s Eyeの第3弾として、キュレーター長谷川 新(Arata Hasegawa, b.1988)の企画によるグループ展「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」を開催いたします。
2013年よりキュレーターとしての活動を開始した長谷川は、同年にチーフキュレーターとして参加した「北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI -交錯する現在-」にて、国内のアートシーンに頭角を現すこととなりました。同展において彼は、自らと同世代である80年代生まれの作家の動向への深い考察のみならず、新進の評論家を多数巻き込み、かつバイリンガルで構成した展覧会図録の出版、さらには東京と金沢への巡回展も成功させるなど、キュレーターとしての仕事を体系的にかつ細部にわたって展開しました。
また2014年秋に京都で企画した「無人島にて―「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション」では、前年の企画とは対照的に、彼自身が生まれていない時代の表現傾向を取り上げ、そこに新たな解釈の可能性を提示した意欲作として、各所で大きな反響を巻き起こしました。卓越した知識量と、歴史を基盤とした洞察力に裏打ちされた彼のキュレーターとしての活動には、多くの美術関係者から注目が集まっています。
本展では、長谷川の視点は再び同世代周辺の動きへと向かいます。近年の美術におけるジャンルの横断や表現・素材の多様性に着目し、それらを明確に分類するのではなく、その境界周辺にある概念や価値、またはその距離感への考察をおこなうものです。
ゼロ年代以後の表現に通底するゆるやかな価値観への接近が期待されます。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
the three konohana 山中 俊広
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OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR
Curator:Arata Hasegawa
「視野の縁でなにが起きているかを知っているだけでは、我慢できなくなりかける。目にはいる部屋の光景はつねに一分の隙もなく、それがまた衝動を煽った。ここまで来ると強迫観念だ--どんなに早く首をまわしても、まわりで起きていることはこれっぽっちもわからない…。」
グレッグ・イーガン『順列都市』
「彼は目を上げて、その翼あるものを見た。見たと言っても両の目にあふれていた玉葱の涙を通してで、したがって数瞬のあいだ突っ立って見つめていたのだった、 なぜならば涙のために奇妙なレンズを通して見たみたいにそれの輪郭がふくれ歪んでいたからで、睫毛が乾くようにと目をすがめた、そしてあらためて見つめた。」
アントニオ・タブッキ『ベアト・アンジェリコの翼あるもの』
「舞台の上では行為が演じられるか、それとも、おこなわれたことが報告されるかの、いずれかである。」
ホラーティウス『詩論』
タイトルとなっている英文は、アメリカ、カナダ、それとインドを走る乗用車のサイドミラーについている警句だ。
「鏡ごしに見えるものは、見かけより近くにある」
そのことばには確かにソリッドな感覚がある。速度を伴っている。
ちょっとした重力も感じることができる。
生死に肉薄した、物質的でミニマルな警句。
そこから、「鏡ごしに」という部分を削り落とす。
本展は7名の作家の、展覧会だ。
荒木悠、上田良、折原ナナナ、柄澤健介、小濱史雄、佐伯慎亮、末永史尚。
僕はここで頻出する修辞を用いることを執拗に拒む。
よくある修辞1。「彼らは一見すると全く異なる作風です。しかし−−」
よくある修辞2。「−−という素材/メディウム/ジャンルの独自性を追求し」
私たちは互いの「近さ」をもっと許容しても良いのではないか。
あるいは今観ているそれが別の似たなにかであり得ることについて、考えを巡らせてみることができるのではないか。
だからこの展覧会は、「近さ」について考えられるようにした。
作品は伸びたり縮んだりするし、展覧会ですべてを見せる必要もない。
もとよりそれは、絶えず遅れている。
展覧会は鑑賞者の少し後方を走っている。(行き先は異なれど少なくとも今は同一方向に)
鑑賞者は鏡ごしにそれを見る。
それは見かけよりもずっと、近くにある。
Posted in 2015, EXHIBITIONS, PAST |