REVIEW
「コノマエノコマノエ」はじまりました!
小松原智史さんの2年ぶりの個展は、絵画そのものへの向き合い方やその思考に明確な変化が生じています。
これまでここ5年の小松原さんの作品は、筆の特性を駆使して、強弱のある線と立体感のある画面構成が作品の特徴でもありましたが、本展では学生時代のGペンでの描きに戻した作品が軸になっています。絵画の画面そのものを可能な限り「フラット」に作り上げていき、そこから再び「無意味とは?」を考えていこうとするものです。これまでの三次元から二次元へと表現の範囲を制約していくことによって、画面上の個々のモチーフの創出へ意識をより集中させようとしています。さらに現実界との接点や空間の認識範囲を狭めていくこととなり、それによって意味が生じていく解釈の余地を埋めていくことにもつながります。
「無意味な世界」を意識した作品を制作し続けている小松原さんですが、この世の中で純然かつ永続して「無意味」を成立させることは、ほぼ不可能です。鑑賞者に思考停止させる状況をその場で作ったとしても、時間の経過とその状況に向き合って分析と解釈を重ねられることによって「意味」が創出されていくことがこの世の常です。そんな堂々巡りする意味の立ち上がりから「逃げて」いき、変化の中に自らの身を置き続けることが、小松原さんが「無意味な世界」を継続して実現するための現在のスタンスです。Gペンによるフラットな画面が作り出す、新たな「無意味な世界」にじっくりと触れていただければ幸いです。
更にもう一つ、今回の展示構成から立ち上がった観点として、個々のモチーフのつなぎ方についても考察しています。本来何かをつなげることによって意味を作り出すことが多い中で、小松原さんはつなげる行為によって意味を解体させていくことを強く意識しています。本展では、会期中断続的に実施するワークインプログレス作品の公開制作は、すでに完成されたタブロー作品を起点として進めていきます。タブロー作品が作用する壁面のリアルタイムな描きとモチーフの関係性を、期間中の壁面の進捗から考えていただけばと思います。そして和室の展示がその対比を更に推し進めるものになっていますので、双方の空間の作品と展示を比較して、思考を巡らせていただければと思います。
また今週末の土日は、毎年秋恒例の「見っけ!このはな」が開催されます。今年は小松原さんが会期中の公開制作をこの2日間も実施します。「見っけ!」にお越しの際には、他の20余りのスペースのイベントと合わせてお楽しみください。
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