REVIEW
2017-08-30加賀城 健 「Physical / Flat」 後期<Flat Side> 展示記録
撮影日:2017年8月3日 撮影:長谷川 朋也
2017-08-30加賀城 健 「Physical / Flat」 前期<Physical Side> 展示記録
撮影日:2017年7月5日 撮影:長谷川 朋也
2017-08-30加賀城 健「Physical / Flat」に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介
加賀城 健「Physical / Flat」展につきまして、各所にてプレビュー・レビューをご掲載いただきました。
主だったご掲載記事を以下にまとめてご紹介させていただきます。当展をご紹介くださったみなさまに、心より御礼申し上げます。
・『染織情報α 2017年7月号』(プレビュー/6月1日)
・Lmaga.jp 「小吹隆文撰・関西アートニュース」(プレビュー/6月15日)
https://www.lmaga.jp/news/2017/06/25342/
・KANSAI ART BEAT 「KABlog」(レビュー[ATSUKO NOMURA氏]/7月4日)
http://www.kansaiartbeat.com/kablog/entries.ja/2017/07/the-three-konohana_ken-kagajo.html
・『美術手帖 2017年7月号』 ARTNAVI(プレビュー/6月17日)
・ブログ「プラダーウィリー症候群(Prader-Willi Syndrome)の情報のメモ」(レビュー/7月16日)
http://d.hatena.ne.jp/prader-willi/20170716/art
・加賀城健「〈Physical/ Flat〉展 (レビュー[前田裕哉氏]/9月18日)
https://medium.com/@wakarite075/%E5%8A%A0%E8%B3%80%E5%9F%8E%E5%81%A5-physical-flat-%E5%B1%95-14aad67f93fd
・『染織情報α 2017年11月号』「工芸」と「現代美術」を横断する染色表現(レビュー[山中俊広]/10月20日)
2017-08-29<THC> @ Calo Bookshop & Cafe はじまりました!
森村誠さんの2年ぶりの個展は、2部構成で開催します。
まずは前半戦、プレ展示の<THC>は、会場を大阪・肥後橋駅すぐのCalo Bookshop & Cafeにて、9月9日(土)まで2週間の会期で開催しています。
ご存知の方も多いと思いますが、Caloさんは2階から5階までギャラリーが入っている若狭ビルの5階にあり、書店とカフェが併設されたギャラリーです。(ちなみに、今年2月~3月の泉茂展を同時開催したYoshimi Artsさんと同じビルにあります。)
この<THC>展では、新旧9点の作品を出品しています。本展のハイライトとなる、アメリカの小説家ウィリアム・バロウズが着想となった作品は、2014年に制作した未発表作が5点、制作途中だったものを再開して完成させたものが1点、そして本展を機に制作した新作が1点という構成になっています。また2009年に中国で発表した、テーマに類似する作品も2点ご紹介しています。
森村さんの主要な制作スタイルである、印刷物上の該当の文字を修正液で消した作品とカッターで切り取った作品、印刷物の素材も地図と書籍の作品がそれぞれあります。初めて森村さんの作品をご覧になられる方にも、森村さんの作品の基本形が分かりやすい構成になっていると思います。
昭和30年代にアメリカの文学界を席巻した「ビート・ジェネレーション」は、当時の社会へのアンチテーゼ的な主張やアクションを通じて、若者文化をもけん引したムーブメントとして知られ、のちのラップやヒッピーのルーツとも言われています。本展のバロウズにちなんだ主要作品は、英語のものは「THC」、日本語のものは「大麻(たいま)」の文字をクローズアップしたものとなっています。ライフスタイルの過激さも有名なバロウズの麻薬中毒の側面と、作品作りの特徴である「カットアップ手法」と森村さんの文字を切り取る手法を、作品群ではリンクさせています。また本展はCaloさんのご協力により、バロウズ関連の書籍を取り寄せていただき、作品と共にご覧いただける構成にもなっています(書籍もその場で購入・持ち帰りが可能です)。「ビート・ジェネレーション」周辺の文化や社会の動向も、合わせて知る機会になれば幸いです。
森村さんの制作の基準として、特に切り取った文字から具体的な価値判断やメッセージを主張するものではありません。事実や現状から、言葉や情報を断片的に切り取って浮かび上がらせることによって、その事柄の存在を鑑賞者の意識へ傾けて、思考と想像を活性化させていく、潤滑油的な役割を担っています。表層的にはやや過激で反社会的な要素が見られますが、客観的に捉えていただいて、各々の経験や知識と咀嚼しながら、森村さんの作品に向き合っていただければと思います。
作品の配置は、Caloさんの店内の構成上、メインのギャラリースペース以外にも作品を散らばらせていますので、9点ともぜひお見逃しなくご高覧ください。また、カフェスペースもありますので、ドリンクやデザートと共にゆったりと展示をお楽しみください。(なお、期間中に本展にちなんだデザートをご用意いただく予定になっています。こちらもぜひお楽しみに!)
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Calo Bookshop & Cafeへは、下記の公共交通機関でお越しください。
・ 大阪市営地下鉄四つ橋線 肥後橋駅6号出口徒歩1分
・ 御堂筋線 淀屋橋駅12号出口徒歩5分
・ 京阪電鉄中之島線 渡辺橋駅より徒歩8分
2017-07-19<Flat Side>はじまりました!
加賀城さんの個展3部作は、先週から最後のパートに入りました。
ttkの後期展<Flat Side>の出品作品は、本展の加賀城さんのもう一つのコンセプトキーワード、「平面性」からセレクトしました。
加賀城さんは30代のころから積極的に、絵画と染色の比較に比重を置いた平面的表現に取り組んできました。そのため、20年余りの時間軸で構成された前期展に対して、後期展では2009年から最新作までの10年余りの作品の中から作品を構成しています。
また、多様な形態の作品で構成された前期展と比べて、後期展はタブローとしての形態の作品が主となっていますので、作品点数も24点と前期展の1.5倍になっています。
またモノトーンの作品が多かった20代に比べて、30代の加賀城さんの作品は色彩のバリエーションが一気に広がっていく傾向にあります。染色の技法や素材の観点から捉えても、30代に入ってそれらの扱いの範囲が拡大していったのも大きな特徴です。美術領域の絵画への意識の強まりと並行して、染色そのものの表現の広がりと可能性の追究を、染色にまつわるあらゆる素材技法を駆使しながらさらに強めていった時期と言えるでしょう。
先週、ART OSAKA 2017にて3日間限定の展覧会となりました<New works / Extention>で発表した新作の一部も、後期展に組み込みました。ART OSAKAでの展示をご覧いただいた方にはお気づきの方も多いかと思いますが、加賀城さんの新作では染色と絵画の比較論をさらに深めた作品が目立ちました。絵の具が支持体の上に積み重なっていく美術の絵画と異なり、メディウムとしての染料は何度も重ねても支持体に染み込んでいき、物質的な重なりが見られないという染色の根本的な特性はこれまでの作品でも主張してきましたが、その積み重なる画面上のレイヤーのベクトルが、今回の新作から一つの法則性として明確に提示されたように思います。その新たな視点から、過去の染色の平面性を強調した作品を見直すことにより、染色を常に表現の手段に用い続けてきた加賀城さんの意図がよりはっきりと見えてくることでしょう。
また、先の前期展<Physical Side>での「身体性」のアプローチとのリンクも、この後期展の作品群には随所に見られます。加賀城さんの表現の一要素を切り取った各論として、そして並行して3部作の加賀城展の総論としても、加賀城さんの20年余りの表現の変遷を多角的に読み取っていただける後期展となればと思います。
2017-06-22<Physical Side>はじまりました!
ttkでは3度目となる今回の加賀城さんの個展は、ttkとしても初めての枠組みが随所に盛り込まれた企画です。現存作家としては初めての旧作を中心とした作品構成、そして前期後期に分けたttkと、ART OSAKAでの新作展示、それぞれ異なる作品による3種類の展覧会で構成する形式も初めての試みです。
加賀城さんと言えば、染色の技法を使って多種多様な表現をする作家、または美術と工芸のはざまを表現する作家として認識されている方が多いと思われます。その多様性が特徴となっている作家性を、本展ではこれまでの加賀城さんの作家活動を、「Physical/身体性」と「Flat/平面(性)」の2つの観点から分析していくことが狙いです。
まず現在開催中の前期展〈Physical Side〉では、「Physical/身体性」をキーワードに1999年から2017年までの14点の作品を選び、7月9日(日)まで展示しています。
加賀城さんが20代の頃に特に取り組んだ表現手法は、布の上に置いた糊をスキージー(シルクスクリーンを刷るときに使う大きなヘラ)で引きずっていき、その後染色または脱色でその痕跡を布上に現わすというものです。何らか具体的な図像を描くものではなく、加賀城さんの身体の動きと布の接触による現象的な表現を目指したものと言えます。さらに、自らの指の動きを布上の糊に反映させる作品も頻繁に作られていきますが、染色表現と身体の関係を思考する加賀城さんのその後の主題は、両者の直接的な関係を越えて、染色表現の構造と視点を多様化していく方向へ進んでいきます。
身体そのものを反映させた布としての作品は、そこに力学、触覚、空間への視点が加わっていくことで、人間の身体のスケールを再認識するものとしても作用していきます。その加賀城さんの視点と方向性の中心にあるものは、染色で何を作っていくのかというよりも、染色とは何かという起点から、素材と技法の細部にわたる観察・研究が自然と作品として成立していくプロセスであろうと思います。前期展は、その身体性の主題の起点からその後の展開を、18年間の14の作品で概観する構成としています。
また一部の作品には、発表当時の展示方法と異なるものもあります。さらに新作も1点含まれており、ただ過去の作品に触れるだけではなく、当時から現在に至る加賀城さんの思考の変化にも意識を傾けていただければと思います。
そして前期展の終盤には、7月7日(金)~9日(日)に開催のART OSAKAにて、加賀城さんの新作展示が重なります。今回の新作は、この本格的な自らの振り返りの機会を踏まえたものとなりますので、加賀城さんの本展への1つの回答として、乞うご期待ください。
来月7月15日(土)から始まる、「Flat/平面(性)」をキーワードとした後期展でも同様にテキストを書かせていただき、最終的にはかたちで残るもので本展の成果をまとめていきたいと考えています。
2017-04-19泉 茂「PAINTINGS 1971-93」 展示記録
撮影日:2017年3月13日 撮影:長谷川 朋也
2017-04-19泉 茂「PAINTINGS 1971-93」に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介
泉 茂「PAINTINGS 1971-93」展につきまして、各所にてプレビュー・レビューをご掲載いただきました。
主だったご掲載記事を以下にまとめてご紹介させていただきます。当展をご紹介くださったみなさまに、心より御礼申し上げます。
・『GALLERY 2月号』 今月の展覧会50+(プレビュー/2月1日)
・読売新聞関西版 夕刊文化欄(レビュー/3月6日)
・毎日新聞関西版 夕刊芸術欄(レビュー/3月8日)
http://mainichi.jp/articles/20170308/ddf/012/040/025000c
・大阪芸術大学ブログ(レビュー/3月15日)
http://geidai-blog.jp/2017/03/15-3.html
・artscape 「artscape レビュー」(レビュー(小吹隆文氏)/4月1日)
http://artscape.jp/report/review/10133847_1735.html
・ブログ「みづェ…」(レビュー [前田裕哉氏]/4月7日)
http://atashika-ymyh.hatenablog.jp/entry/2017/04/07/180422
2017-03-22トークイベント 「泉茂 ハンサムな絵のつくりかた」 講演記録公開のお知らせ
3月4日(土)に泉 茂「PAINTINGS 1971-93」の関連イベントとして開催いたしました、トークイベント「泉茂 ハンサムな絵のつくりかた」の講演記録を公開いたします。
当日の植野氏の講演の文字起こしに加筆修正をおこない、スライド資料の一部を加えて編集したものです。植野氏にも編集にご協力いただきました。
泉茂の生涯と作品の変遷の解説を中心とした資料になっております。ぜひ多くのみなさまにご一読いただき、泉茂の作家活動への認識・理解の一助になれば幸いです。
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トークイベント 「泉茂 ハンサムな絵のつくりかた」 講演記録
開催日時:2017年3月4日(土)15:00~16:15
会場:the three konohana
講演:植野 比佐見 氏(和歌山県立近代美術館 学芸員)
主催:Yoshimi Arts、the three konohana
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記録:山中 俊広(the three konohana)、稲葉 祐美子(Yoshimi Arts)
編集:植野 比佐見(和歌山県立近代美術館)、山中 俊広
講演記録はこちらからダウンロードください。 [PDF 4.0MB]
2017-03-02「PAINTINGS 1971-93」はじまりました!
いま美術の現場では、20世紀後半の日本のアートシーンを見直し、再評価する機運が高まっています。関西でも具体や関西ニューウエーブを中心にその活動を再考する展示やイベントが目立っています。本展でご紹介する泉茂さんは、戦後すぐに瑛九と共に「デモクラート美術家協会」を設立し、大阪芸術大学で教鞭をとられた間に多数の作家を輩出するなど、亡くなられて20年余りが経ちますが泉さんの活動面については明らかに大阪および関西のアートシーンを捉えるための重要なポイントになっています。
一方でその活動面だけでなく、泉さん自身の作品表現においてもその要素を考察することが本展の大きな目的です。それは、同時に開催されている和歌山県立近代美術館での泉展も同様です。
泉さんの作品を実際に目の当たりにして、当時の表現の傾向を再考する機会であると同時に、本展を開催する私たちコマーシャルギャラリーとしての立場としては、いまの若い世代の表現を考える上でも絶好の機会であろうと考えています。とりわけ、近年の絵画・平面表現の傾向としては、直接的な身体性や感情といった主観的要素から意識的に距離を置くアプローチが、若い世代の作品に目立ってきている印象があり、本展で紹介している泉さんの作品群にも同様の傾向が随所に見受けられます。以前から美術の表現は常に更新されていると同時に、一定のスパンで同様の傾向を繰り返す図式もあります。もちろんそれぞれの時代背景や環境は異なりますが、細部を比較することによって見えてくる泉さんの作品といまの若い世代の作品の間との共通項を、様々な角度から見出していければと思います。ただ過去を懐かしむだけでなく、現代を過去から見直すことが、過去と現代を隔絶することなく歴史を継承していく大切な考え方だと思います。
本展では、ニューヨークとパリにいた60年代を経た、帰国後の70年代以降の絵画作品を取り上げています。若かりし頃からデモクラート時代の作品には有機的な雰囲気がありましたが、60年代から徐々にその要素が薄まっていきます。そして本展でご紹介する70年代以降の作品は、ほぼエアブラシによって制作されている絵画ですが、いかに身体や感情と距離を置くことで絵画が成立するかに取り組んでいた時代のものです。そのアプローチは、ただ画面をいかにシンプルに構成するかというものではなく、客観性を保ちながら、論理的かつ理知的に画面を構成する制作方法でした。
Yoshimi Artsで展示している70年代の絵画と、ttkで展示している80年代以降の絵画は、以上の観点で一貫性はありますが、実際の作品は両会場でとても対照的です。自らと絵画そのものとの間に距離を置くことと、泉さんが生涯通じて変化を求めてきた狙い、そして壮年期から晩年期に向かう際の変化なども、両会場の作品の比較を通じて見えてくるポイントだと思われます。
本展はYoshimi Artsと2会場の展示に加えて、和歌山県立近代美術館で開催されている回顧展の計3会場で同時に泉さんの展示をご覧いただける機会になりましたが、3会場それぞれ違う視点で泉さんの作品と向き合えるかと思います。和歌山近美の展示では、本展では展示されていない初期の絵画からデモクラート時代、海外渡航時代の作品に加えて、版画作品もあり、泉さんの活動の全容を時代に沿って総体的に捉えることができます。一方で本展は、泉さんの生涯の後半部分を取り上げ、さらに絵画に絞ることで泉さんの平面表現における本質的な思考を読み取っていただく構成になっています。また美術館と対照的な展示空間の規模もあって、個々の作品やその細部に向き合いやすい鑑賞環境になっていると思います。3会場すべての展示を通じて、泉さんの総論と各論の双方を捉えることができる構成です。
本展と和歌山近美でご紹介している泉さんの作品を通じて、過去を整理すると同時に、現代の価値観と結びつけ、さらには絵画や平面表現における将来の展望まで議論や思考が広がっていく機会になればと思います。以前から泉さんをご存じだった方はもちろんのこと、これまで泉さんを知らなかった方々にもぜひご覧いただきたい展覧会です。違う時代、違う価値観であってもそれらを包括できる要素は、泉さんの作品群の随所に散りばめられています。