EXHIBITIONS

2015-01-10
Director’s Eye #3 「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」

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・「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」 展示風景

・「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

 

 

Director’s Eye # 3
「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」
2015年1月10日(土)~3月1日(日)

キュレーター:長谷川 新
出品作家:荒木 悠上田 良折原 ナナナ柄澤 健介小濱 史雄佐伯 慎亮末永 史尚

開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月曜~水曜、1月17日(土)~28日(水) (※ ただし1月12日(月・祝)は開廊)
会場:the three konohana

* * *

《関連イベント》 (※詳細はこちら
会場:PORT http://shikanjima-port.jp/
大阪市此花区四貫島1-6-6 [四貫島中央通商店街内]
(the three konohanaより徒歩5分)

・レセプション
1 月10 日(土)19:00~21:00
入場無料(ドリンクキャッシュオン制)

・めりカフェ「抹消の痕跡をたどる──ルネサンス美術における上塗りと未完成」
特別講師:古川萌
2 月1 日(日)18:00~20:00
入場料500円+ワンドリンク注文制

Ustream配信の様子(録画):http://www.ustream.tv/recorded/58311480
当日の配布資料(改訂版)→[PDF]
当日のスライド資料→[PDF]

・荒木悠作品上映会
ゲスト:菅原伸也 (※トークのレジュメはこちらからダウンロード可能です→[PDF]
2 月14 日(土)18:00~21:00
入場料500円

・「SAVE THE CLUB NOON」上映会
ゲスト:宮本杜朗監督
2 月15 日(日)18:00~21:00
入場料500円
http://savetheclubnoon.com/

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このたびthe three konohanaでは、Director’s Eyeの第3弾として、キュレーター長谷川 新(Arata Hasegawa, b.1988)の企画によるグループ展「OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR」を開催いたします。

2013年よりキュレーターとしての活動を開始した長谷川は、同年にチーフキュレーターとして参加した「北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI -交錯する現在-」にて、国内のアートシーンに頭角を現すこととなりました。同展において彼は、自らと同世代である80年代生まれの作家の動向への深い考察のみならず、新進の評論家を多数巻き込み、かつバイリンガルで構成した展覧会図録の出版、さらには東京と金沢への巡回展も成功させるなど、キュレーターとしての仕事を体系的にかつ細部にわたって展開しました。

また2014年秋に京都で企画した「無人島にて―「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション」では、前年の企画とは対照的に、彼自身が生まれていない時代の表現傾向を取り上げ、そこに新たな解釈の可能性を提示した意欲作として、各所で大きな反響を巻き起こしました。卓越した知識量と、歴史を基盤とした洞察力に裏打ちされた彼のキュレーターとしての活動には、多くの美術関係者から注目が集まっています。

本展では、長谷川の視点は再び同世代周辺の動きへと向かいます。近年の美術におけるジャンルの横断や表現・素材の多様性に着目し、それらを明確に分類するのではなく、その境界周辺にある概念や価値、またはその距離感への考察をおこなうものです。
ゼロ年代以後の表現に通底するゆるやかな価値観への接近が期待されます。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

the three konohana  山中 俊広

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OBJECTS IN MIRROR ARE CLOSER THAN THEY APPEAR
Curator:Arata Hasegawa

「視野の縁でなにが起きているかを知っているだけでは、我慢できなくなりかける。目にはいる部屋の光景はつねに一分の隙もなく、それがまた衝動を煽った。ここまで来ると強迫観念だ--どんなに早く首をまわしても、まわりで起きていることはこれっぽっちもわからない…。」
グレッグ・イーガン『順列都市』

「彼は目を上げて、その翼あるものを見た。見たと言っても両の目にあふれていた玉葱の涙を通してで、したがって数瞬のあいだ突っ立って見つめていたのだった、 なぜならば涙のために奇妙なレンズを通して見たみたいにそれの輪郭がふくれ歪んでいたからで、睫毛が乾くようにと目をすがめた、そしてあらためて見つめた。」
アントニオ・タブッキ『ベアト・アンジェリコの翼あるもの』

「舞台の上では行為が演じられるか、それとも、おこなわれたことが報告されるかの、いずれかである。」
ホラーティウス『詩論』

 

タイトルとなっている英文は、アメリカ、カナダ、それとインドを走る乗用車のサイドミラーについている警句だ。

「鏡ごしに見えるものは、見かけより近くにある」

そのことばには確かにソリッドな感覚がある。速度を伴っている。
ちょっとした重力も感じることができる。
生死に肉薄した、物質的でミニマルな警句。
そこから、「鏡ごしに」という部分を削り落とす。

本展は7名の作家の、展覧会だ。
荒木悠、上田良、折原ナナナ、柄澤健介、小濱史雄、佐伯慎亮、末永史尚。
僕はここで頻出する修辞を用いることを執拗に拒む。

よくある修辞1。「彼らは一見すると全く異なる作風です。しかし−−」
よくある修辞2。「−−という素材/メディウム/ジャンルの独自性を追求し」

私たちは互いの「近さ」をもっと許容しても良いのではないか。
あるいは今観ているそれが別の似たなにかであり得ることについて、考えを巡らせてみることができるのではないか。

だからこの展覧会は、「近さ」について考えられるようにした。

作品は伸びたり縮んだりするし、展覧会ですべてを見せる必要もない。
もとよりそれは、絶えず遅れている。

展覧会は鑑賞者の少し後方を走っている。(行き先は異なれど少なくとも今は同一方向に)
鑑賞者は鏡ごしにそれを見る。
それは見かけよりもずっと、近くにある。

 

2014-11-01
Konohana’s Eye #6 小松原 智史 展 「エノマノコノマノエ」

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・小松原 智史 展「エノマノコノマノエ」 展示風景

・小松原 智史 展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

 

Konohana’s Eye #6
小松原 智史 展「エノマノコノマノエ」
2014年11月1日(土)~12月21日(日)

開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月曜~水曜、11月6日(木)~9日(日)
会場:the three konohana

オープニングパーティー:11月1日(土)18:00~21:00

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このたびthe three konohanaでは、小松原 智史(KOMATSUBARA Satoshi, b.1989)の国内での初個展を、Konohana’s Eyeシリーズの第6弾として開催いたします。

小松原は、大阪芸術大学大学院在籍中の2013年に、「第16回岡本太郎現代芸術賞展」で特別賞を受賞し、展示会場で約2か月の会期を通じて公開制作を継続的におこなったパフォーマンスと、その力強い展示が印象に残っている方も多いかと思います。学生時代より彼は、「イメージの増殖による無意味性の提示」を主題に、主に墨を用いた絵画表現に取り組んできました。

小松原が大きな画面や壁面に次々と描いていく具体的なモチーフに、特に意味や脈略はありません。彼の頭の中から自然と湧き上がった個々のモチーフとそのイメージは、平面または空間を埋め尽くしていく過程の中で混ざり合い、個々のかたちや輪郭、さらにメッセージや感情も共にノイズ化され、最後には無意味へと行きつかせるアプローチの下に制作しています。
彼が主張する無意味性の問題は、最近の表現の潮流に見られる意味性の一方的な放棄に留まるものではありません。意味が失われた世界や空間が提示されることにより、人間には再び意味を求めようとする習性があります。なぜなら人間は、常に自らの存在意義を追い求める生きものであること。彼は、モチーフが増殖しイメージが無意味となった画面に、新たに意味性を感じさせる具体的なモチーフを描き加えます。けれども、次のモチーフを描くことで直前のモチーフは、即座に無意味の概念に吸収されていきます。意味から逃げ続けながらも新たに意味あるものを創出する行為の反復を通じて、彼は意味と無意味の世界を堂々巡りすることに執着しています。
また、彼が毎回展開させている、空間性を意識したダイナミックな表現も、その両者の世界を考察するアプローチとして重要なものです。私たちの視界を彼が描き重ねる過剰なモチーフとイメージで覆い尽くすことにより、個々の意味を求めることを諦めさせるだけではなく、現代における無意味性が情報の氾濫によって生じているという現実にも気づかせてくれることでしょう。この情報過多による無意味性をはらんだ環境は、現代社会においてほぼ避けることはできません。無意味性の壁が立ちはだかることによる思考停止が許される環境に身を任せることも、現代を生きる上では必要不可欠な選択であり、リセットされた現状からいかに次の価値を作り出すべきかを考えることの必要性を、これらのアプローチを通じて彼は訴えているのだと思います。

本展は、小松原の国内での初個展として、恐らく大多数の方々にとって彼の表現の本質を初めて総体的に捉えることのできる機会になります。これまでグループ展や公募展、地域での芸術祭に多数参加してきた彼ですが、自らの主題を鑑賞者により明確に体感していただくために、彼の制作中の身体の一挙一動も展示の一要素となる公開制作を毎回実施してきました。しかし本展では、これまでの発表スタイルから一変し、純粋に彼が描き終えた平面作品のみで展示を構成いたします。

作品として成立している個々の画面とそれらの集合体によって構成される展示空間から、モチーフとイメージが増殖する過程で、個々そして全ての意味が有と無の双方の概念を行き来する世界観を、みなさまにより主体性を持って感じ取っていただく機会になればと思います。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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写真:《コマノエ》[部分] 墨・石膏・パネル 162.0 x 130.3 cm 2014 【当展出品作品】

 

 

 

2014-09-05
Konohana’s Eye #5 NO ARCHITECTS 「NO SHOP」

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・NO ARCHITECTS 「NO SHOP」 展示風景

・NO ARCHITECTS 展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

 

Konohana’s Eye #5
NO ARCHITECTS 「NO SHOP」

2014年9月5日(金)~10月19日(日)

開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月曜~水曜
会場:the three konohana

オープニングパーティー:9月5日(金)18:00~21:00

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コラボレーター:sonihouse、後藤 哲也、権田 直博、ツクリバナシ、ヌケメ、蓮沼 執太、辺口 芳典、poRiff、メガネヤ、山内 庸資、RAD ほか
制作協力: 大川 輝、宮下 昌久、米子 匡司

※ 会期中に関連イベントの開催を複数予定しております。内容および開催日時は、決まり次第HP等でお知らせいたします。

※ NO ARCHITECTS 『NO BOOK』の出版および販売については、こちらをご覧ください。

* * *

このたびthe three konohanaでは、NO ARCHITECTSの現代美術ギャラリーでの初個展を、Konohana’s Eyeシリーズの第5弾として開催いたします。

NO ARCHITECTSは、神戸芸術工科大学で建築を専攻した西山 広志(NISHIYAMA Hiroshi, b.1983)と奥平 桂子(OKUDAIRA Keiko, b.1983)の同級生2名による建築家ユニットです。彼らは、弊廊が位置する此花区梅香・四貫島エリアのまちづくりの活動にも関わり、当エリアの古い建物のリノベーションを数多く手がけています。彼らの仕事は建物のリノベーションの設計・施工のみならず、デザインからインスタレーション、ワークショップ、アーティストの展覧会や企業の展示会の空間構成など、建築の領域のみに留まらない幅広い活動を展開しています。

彼らのユニット名「NO ARCHITECTS」が示す通り、建物を一から全て手がけるプロセスよりも、建築の周辺およびそれを構成する要素に彼らの関心は一貫して向いています。従来からその土地にある雰囲気や意味、そして建物を使う人々の身の丈や考え方、そうしたものをいかに日常の生活の中に反映させるか。そして人間の活動単位でもある「空間」という概念を、分解と再構築を重ねながらいかに私たちのそばに近づけるか。建築の権威的な要素を求めることなく、現代の人々にとって自然な建築のあり方を、彼らは実用面と哲学面の両輪で追究し続けています。

本展では、NO ARCHITECTSがこれまで共に仕事をしてきた画家、家具職人、音楽家、ファッションデザイナーなど、さまざまなジャンルの人々とコラボレーションして制作したプロダクトを、自ら設計を手掛けた弊廊の展示空間にて展開し、期間限定の仮設の店舗「NO SHOP」と見立てた内容といたします。生活に寄り添うことをコンセプトに、それぞれの共働者と議論を重ねてさまざまな視点からの生活への提案が詰まったプロダクトが、彼らの統一感のある空間構成にて独自の店舗として作り上げていきます。また、会期中にはNO ARCHITECTSのこれまでの仕事をまとめたカタログを出版し、さらには10月18日と19日に開催する毎年恒例のまちなかイベント「見っけ!このはな2014」とも連動して、此花エリアをアーカイブすることをコンセプトとした各種企画なども開催いたします。

本来建築は、西洋では中世の教会建築に代表されるように、総合芸術の中心に位置づけられていました。また、「衣食住」の言葉からも、住まいとしての建築は、日常の生活においても必要不可欠な三大要素の一つでもあります。NO ARCHITECTSの建築をベースとした広い視界の中心には、あらゆるものを作り上げかつそれらを使用する人間の存在があると思います。本展は展示と関連イベント共に盛りだくさんな内容となっていますが、様々な立場の人間が多くかかわることによって、たくさんの日常の発見と創造が生まれていきます。それらが建築という中心軸が持つ強い求心力に引き込まれていく日常のダイナミズムを、彼らの気取らなく楽しさにあふれたアプローチを通じて体感していただきたいと思います。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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《大辻の家》 (改修/大阪) 2013

 

2014-06-06
Konohana’s Eye #4 小出 麻代 展「空のうえ 水のした 七色のはじまり」

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・小出 麻代 展「空のうえ 水のした 七色のはじまり」 展示風景

・小出 麻代 展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

 

 

Konohana’s Eye #4
小出 麻代 展「空のうえ 水のした 七色のはじまり」

2014年6月6日(金)~7月20日(日)

開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月曜~水曜
会場:the three konohana

オープニングパーティー:6月6日(金)18:00~21:00

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このたびthe three konohanaでは、小出 麻代(KOIDE Mayo, b.1983)の個展を、Konohana’s Eyeシリーズの通算第4弾として開催いたします。

大学で版画を専攻していた小出は、当初は版画の技法とさまざまな日常品を取り入れた平面や立体の作品を制作していました。とりわけ日常にありふれた既製品への関心が強く、「もの」の固定概念に新たなエッセンスを加味するために、版画の技法を中心に手仕事の要素を既製品に織り込むことを意識した作品が多数見られました。日常のささやかな改変を、個々の完結した作品内で提示するスタイルが、彼女の作家活動の始点にありました。

近年から現在にかけては、小出の表現スタイルはインスタレーションが主軸となっていきます。一昨年の神戸アートビレッジセンター(KAVC)での2人展「1floor / TTYTT, -to tell you the truth,-」では、意識的に手仕事を蓄積させるアプローチに大きな変化が現れました。これまで主だった版画技法での素材へのアレンジがやや影をひそめ、物体を紐で結んだり通したりする単純な行為や、何も手を加えない既製品を空間に設置することが目立つようになりました。権威的な行為といえる美術表現と、日々の生活でなにげなくおこなわれる行為。これら両極の要素を隔てなく調和させていく一定の方向性と距離感が、彼女の中で見いだされた機会になりました。

さらに、昨年のLABORARORY(京都)での個展「すいこみ はきだし ひろがる」では、小出のインスタレーションは前年のKAVCでの展示と比べてより平坦になり、かつ客観性の強さが際立つものとなりました。空間の各所に点在する既製品の物体や従来から見られる版画技法が絡んだ作品的な物体を、ただ淡々と紐や紙テープや電気コードでつなげた空間に仕上げました。まるで、薄いオブラートのような私的な物語性が、空間全体を起伏なく覆っているかのような世界観が展開されました。軽やかかつ柔い素材感と個々の要素がつながれていく行為は、作品としての強固な独立性を拒否していながら、一方では物質という属性を総体的に強調しているようにも感じられました。概念や権威の前に、人の感覚に触れる「もの」の存在を彼女は強く意識します。「もの」があることによって得られる安心感や充実感は、現代の日常の生活においても多くの人々が無意識に享受するものです。そこに対極ともいえる彼女の版画技法などによる美術表現的な「もの」と「行為」がどのように作用するのか、ここ数年彼女が追い求め続けたテーマのように思います。

当展は、ここ数年の小出の表現テーマである、美術表現と日常の行為との関係性をさらに深化させ、弊廊のホワイトキューブと和室の2つの空間の特性を限りなく駆使したインスタレーションにて展開いたします。弊廊の大きな特徴でもある自然光が大きく影響する展示空間による作用が、客観的に提示される「もの」と「行為」との間に、無数の変化と要素の存在を示唆させる内容となります。

現代に生きる私たちは、多数の情報とものが氾濫した世界全体を把握することは不可能であり、無数の小さな世界に気づかないまま日々の生活を送っています。しかし、私たちの意識の外に散らばっている小さな世界は、想像と思考という行為によって誰もが易しくアプローチできるものです。それらに気づくことによって得られる日常の拡大とその充実感は、大きな世界の一義的な価値基準にとらわれない各自の小さなルールを獲得することへとつながります。私たちの日常と世界観を大きく左右するかもしれない何気ないものが何気ないところに存在している、そのような発見を小出がフラットに手を加えた空間から見つけ出していただければと思います。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願いいたします。

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《THE FEATURES OF THISLAND》 ミクストメディア(インスタレーション)  Artfunkl (マンチェスター・イギリス) 2013

 

 

2014-03-28
Konohana’s Eye #3 鮫島 ゆい 展「中空の雲をつかむように」

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・鮫島 ゆい 展「中空の雲をつかむように」 展示風景

・鮫島 ゆい 展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

 

 

Konohana’s Eye #3
鮫島 ゆい 展「中空の雲をつかむように」

2014年3月28日(金)~5月11日(日)

開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月曜~水曜
会場:the three konohana

オープニングパーティー:3月28日(金)18:00~21:00

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このたびthe three konohanaでは、鮫島 ゆい(SAMEJIMA Yui, b.1988)の個展を、今年2014年のKonohana’s Eyeの第一弾として開催いたします。

学生時代から精力的に発表活動をおこない、地元関西のみならず関東など各地で発表を重ねる鮫島は、現在は絵画による表現を軸に制作を続けています。彼女は京都精華大学で版画を専攻していましたが、当初から版画による単一画面の作品よりも、コラージュの形式による多様な素材を使った表現をおこなっていました。 作品に技術や制作の過程を忠実に落とし込むことのできる版画よりも、操作の域を超えるものや人間の心理や感覚にあるノイズなど、予想外の結果をもたらす余地のある表現に、彼女の関心は向いていたように思います。そのため、学生時代の後半から絵画的表現に移行してからも、キャンバスやパネルの画面に違和感のある素材をコラージュする手法を継続しながら、自らの手や意識の及ぶ範囲とそれを超えていく境界線を確かめるような作品が随所に見られました。

近年から現在にかけては明確なコラージュの表現は影を潜め、純粋な絵画表現が中心となりますが、それでもアクリル絵具による同一画面上に相反するかたちや質感を描くことを続けていきます。鮫島は自らのステートメントで「ホムンクルス」という表現を多用します。錬金術師が人造人間を作るルネサンス期の説話に則って、不完全でありながら生命体を思わせるようなかたちを、複数の要素からなる構成によって画面上に描き出すイメージを持ち続けています。理性的に構成された明確なかたちと、身体感覚に拠った不明確なかたち。これらの対照的な要素を、有機性と客観性を両立させながら単一の画面に収斂させていくことが、彼女の現在の絵画に向き合う主題および態度となっています。彼女なりのコラージュの純化と言えるでしょう。

 

当展は、これまでの鮫島の作風の変化と展開に一貫してきた、意識と感覚を発生の源とし両極の理想的な構成へと進める、自らの造形表現の原点を再考することを主題とします。 現在の彼女の主たる表現である絵画作品では、彼女のコラージュの概念に残されていた素材感や感情的なものをさらに強く排除し、彼女の二極化されたかたちとその構成を純粋な絵画のフォーマットに落とし込むことを強く意識づける内容となります。本来の芸術表現に必要とされる現実と架空の2つの要素を冷静に並列 させつつ、双方の強弱による構成の多様性を提示することにより、人間の視覚と想像の接触による別次元のかたちの世界を私たちに意識させていきます。

加えて、彼女の造形のルーツを更に追究するための重要なアプローチとして、昨年のトーキョーワンダーサイト本郷(東京)の個展でも発表した、異素材を組み合わせた立体作品の新作も展開します。彼女が学生時代から手がけていたコラージュに原点回帰する表現と位置づけ、実体のある物質や質感から不確かなイメージを導き出す過程を提示するものです。現実感の強い三次元による造形では、一方でかたちの認識が人間の視覚に頼らざるを得ないという事実にも直面します。自ら操作可能な世界として位置づけられる絵画表現の前段階にある、現実との向き合い方とその解体の過程を、彼女の立体作品を通じて認識していただければと思います。

当展のタイトル「中空の雲をつかむように」は、実体や境界が不明瞭な空間の中に明確なかたちのないものを見いだしていくという意味です。雲のように有機的かつ生命感のあるかたちを見つけ出そうとしながらも、感情や表情がなくかつ実体の有無を捉えきれないかたちを同時に拾い上げていく、自らの表現に向き合う鮫島の姿勢を表しています。視覚と認識で構成される現実界の存在を前提としながらも、私たちの思考や感情が混在した世界には、数多くの曖昧な意味やかたちが各所に散らばっています。これらの確かさと不確かさを鎖で繋げる行為に、私たち個々の小さな世界を把握するためのひとつの答えが潜んでいるように思います。この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

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《形影の家》 アクリル、キャンバス 65.2 x 65.2 cm 2014 [当展出品作品]

 

 

2014-01-11
Director’s Eye #2 野口 卓海  「まよわないために -not to stray-」

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・『続・まよわないために -continuation of ”not to stray”- 』  text: 野口 卓海

・「まよわないために」を振り返って

・「まよわないために -not to stray-」 展示風景

・「まよわないために」展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

 

Director’s Eye #2 野口 卓海
「まよわないために -not to stray-」

2014年1月11日(土)〜3月2日(日)

開廊時間:毎週木曜〜日曜 12:00〜19:00

休廊日:毎週月曜〜水曜、1月19日(日)~26日(日)
会場:the three konohana

展覧会ディレクター:野口 卓海
出品作家:國政 聡志田中 秀介乃村 拓郎三木 祐子+金崎 亮太
デザイン:前田 大介

オープニングパーティー:1月11日(土)18時〜21時
トークショー:2月8日(土)18時〜19時

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the three konohana 2年目の最初を飾る展覧会は、Director’s eyeの第2弾となります。関西を拠点に展覧会やイベント企画、そして美術評論をおこなう、野口 卓海(Takumi Noguchi, b.1983)の企画によるグループ展「まよわないために -not to stray-」を開催いたします。

野口は、アート全般の企画を金崎 亮太と共に実施するユニット「Yoha Public」を結成し、関西の百貨店での展覧会や演奏会を多数開催してきました。また、個人の活動として、同世代の作家を中心に作家評論なども執筆しています。

今回野口にとっては、ギャラリースペースでの展覧会は初めてのディレクションとなります。同世代の80年代生まれの作家4組による構成のグループ展を通じて、世代に共通する価値観を提示することを目的としています。

Director’s Eyeの本来の目的は、展覧会を企画する専任ディレクターの育成とその役割の必要性を強調することです。自ら提示した主題を明確に反映させる展示を実現し、それを改めて深く言語化していくことを実践する場になればと思います。

国内における80年代生まれの人々は、感受性の強い子供の頃にオウムのサリン事件や酒鬼薔薇事件などセンセーショナルな出来事を目の当たりにして、独特の物事の解釈が随所に見られる世代だと認識しています。同世代のディレクターによる同世代の作家へのディレクションを通じて、その世代の典型的な価値観を明確に提示してくれることを期待しています。

the three konohana  山中 俊広

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【当展趣旨】

本展覧会は、そのタイトルが指し示す通り「まよわないために」企画されました。美術のみに関わらず、いわゆる“現代”を取り巻く目まぐるしい状況の只中で、私たちはそれぞれに戸惑い、断続的なつまづきに辟易しながら、にも関わらず“どこか”を目指し続けています。まるで幻想のような“単一の目的地”の存在を、未だに私たちは妄信しているのかもしれません。しかし、大いなる“目的地”が明らかに失われた現代で、私たちはまずそれぞれの個人的な“現在地”についてこそ考えるべきではないか―いや、むしろ“現在地”についてのみ、私たちは互いに語りえるのではないか―本展覧会は、大体そのような出発点から歩き出しています。

今回取り上げる四組の作家は、主題・技法・媒体などそれぞれに全く異なります。が、彼らには共通して或る強度―つまり、“現在地”と“その道程”への強いつながりが感じられます。なぜ彼らがその表現へと至ったのか、論理的にも感覚的にも接近できる道筋がいくつも残されており、そしてその道を辿るような行為そのものが深く豊かな鑑賞と体験を生み出します。どこから・どのようにして“現在地”へとたどり着いたのか、時折立ち止まって確認し、その自らの道程をより深く見つめること。それは、現代美術の迷宮で「まよわないために」彼らが獲得した姿勢とも呼べるでしょう。そして、この姿勢にこそ、現代の若手作家における同時代性が立ち現れているのです。

当展ディレクター 野口 卓海

 

2013-11-08
Gallerist’s Eye #1 岡本 啓 展「Visible ≡ Invisible」

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・岡本 啓 展を振り返って

・岡本 啓 展「Visible ≡ Invisible」 展示風景

・岡本 啓 展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

 

Gallerist’s Eye #1
岡本 啓 展「Visible ≡ Invisible」

2013年11月8日(金)~12月23日(月・祝)

開廊時間:木曜~日曜 12:00~19:00 (※12月23日は月曜日ですが開廊いたします)
休廊日:毎週月曜~水曜
会場:the three konohana

協力:Yoshiaki Inoue Gallery

オープニングパーティー:11月8日(金)17:00~21:00

ギャラリスト・トーク:11月30日(土)18:00~19:00
山田 浩之(Yoshiaki Inoue Gallery ディレクター)、山中 俊広(the three konohana 代表)

* * *

【開廊時間変更のお知らせ】
なんばパークスで開催の「ギャラリストのまなざし」展のイベントの都合により、
12/1(日)、12/7(土)、12/8(日)の3日間、岡本啓展「Visible≡Invisible」のオープン時間を以下の通り変更させていただきます。
みなさまにはご不便ご迷惑をおかけいたしますが、なにとぞご容赦くださいませ。

・12/1(日) 17:00~20:00
・12/7(土) 16:00頃~20:00
12/8(日) 12:00~16:00

* * *

the three konohanaの開廊1年目の最後の展覧会は、独特の手法による写真作品を主に制作する岡本 啓(Akira Okamoto, b.1981)の個展を開催いたします。当展は、弊廊の3本柱の企画のひとつである「Gallerist’s Eye」シリーズのこけら落としとして、Yoshiaki Inoue Gallery(大阪)の協力にて開催いたします。

岡本の作品は写真を主なメディアとしていますが、フィルムを媒介した一般的な写真表現とは異なり、暗室内での作業が制作において重要な位置を占めます。現像液や光を用いて印画紙の上に色やかたちを直接描く、フォトグラムという手法を彼は用いますが、一般的なモノクロではなくカラーで描くことで、彼独特の表現を深めてきました。

彼が写真の技術を駆使して絵画的な表現をおこなうことの意味は、写真と絵画という平面表現を代表する二つのメディアによる「イメージ」の問題提起であるように思います。彼の抽象的なかたちを印画紙に表出させる行為は、現実を転写するものではなく、写真と絵画双方の領域における画面の構成要素となる色彩の存在を強調させるものです。さらにこの現像液や光を用いての恣意的かつ感覚的な制作過程には、それぞれの素材による化学反応としての偶然性をも内包しており、全てが計算された構図で成立しない事実を提示して、現実と虚構の共存もほのめかしています。

そして、作品内に含まれる色やかたちの使い方にも、彼独特のアプローチがあります。そもそも写真とは、私たちの現実の視覚を切りとったものとされる一方で、現実のまま忠実に再現できるものでもありません。彼の作品には、具体的な何かに見えるかたちが頻繁に現れます。しかし、それらは意図的に色彩を組み合わせたものに過ぎなかったり、偶然的に現れたものであるなど、画面上に現れるかたちそのものに大きな意味はありません。つまり、他者の思考や記憶によって作られた虚構のイメージです。一方で近年は、実際に何かを撮影したフィルムを従来の作品に重ねて現像した作品も登場しています。従来の彼の写真の素材を使って「描く」行為は、一般的な絵画と同様に、彼の何らかの経験が契機となって画面上で構成されていくものです。素材・ジャンルとしての写真を再定義させつつ、現実空間に見えるものと見えないものを再構成させるメディアとしての絵画の存在をも強調していく現在の彼の関心は、両者の美術表現としての関連性の分析へと向いているように思います。

当展の枠組みである「Gallerist’s Eye」は、作家が所属するギャラリーなどで従来発表している表現スタイルと異なる、新しい側面を浮かび上がらせることを目的とした企画です。当展で岡本が新たに挑戦するものは、鮮やかな色彩を排除したモノクロームの世界とギャラリー空間を使った本格的なインスタレーションとなります。つまり、彼が主たる作品としてきた写真としての作品は今回展示されません。彼の表現において代表的な特徴である鮮やかな色彩、その背後にあるイメージを探る内容となります。

彼の写真作品の着想の源泉としてのオブジェやドローイングなど、多種多様な作品群をホワイトキューブと和室の展示空間に対照的に構成して、彼の概念的な世界観を展開いたします。従来の色彩豊かな表現は影を潜め、あくまでもかたちや物質感といった具体的な物象が提示されていきます。それによって強い印象を与える要素よりも、一つ一つの静的なイメージが論理的にその関連性を組み立てていく展示となることでしょう。

人間は、表層にはっきりと存在するものを把握することによって、そこにある物象を認知します。岡本の作品では、それが色彩と写真になりますが、それはあくまでも枠組みを把握したことにしか過ぎません。彼がこれまで作品の深奥にひっそりと隠してきた、現実空間で把握できないイメージへ向かう過程に当展の主題を絞ることによって、漠然と見えるものとしての表皮ではなく、概念としての表皮とその本質へと思考をシフトさせる重要性に気づいていただければと思います。この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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《PHOTOGRAPHIC MEMORY》 発色現像方式印画、古道具
客間 240.0 x 290.0 cm / 大階段 280.0 x 193.0 cm 2012 [撮影:長谷川朋也 / 奈良・町家の芸術祭 HANARART 2012]

 

2013-09-06
Konohana’s Eye #2 加賀城 健 展「ヴァリアブル・コスモス|Variable Cosmos」

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・加賀城 健 展を振り返って

・加賀城 健 展「ヴァリアブル・コスモス|Variable Cosmos」 展示風景

・加賀城 健 展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

 

Konohana’s Eye #2
加賀城 健 展「ヴァリアブル・コスモス|Variable Cosmos」
2013年9月6日(金)~10月20日(日)

開廊時間:木~日曜 12:00~19:00
休廊日:毎週月~水曜
会場:the three konohana

オープニングパーティー:9月6日(金)17時~21時

 

★ 加賀城 健 ワークショップ 「このはなの日」 カラフルハンカチをつくろう!!

the three konohana にて個展を開催中の加賀城健さんによる染色のワークショップを、10 月12 日( 土)、13 日( 日) に開催する「このはなの日 2013」にあわせて開催いたします。
加賀城さんの作品は、染料で意図しない偶然的な鮮やかな色やかたちを布の上に染めたものです。
「このはなの日」のロゴがプリントされたハンカチに、ユニークな絞り染めの方法から一つを選んで参加者自らで染めてもらい、自分だけのオリジナルハンカチを持ち帰ることのできるワークショップです。
子どもも大人も簡単に楽しめますので、ぜひお気軽にご参加ください!

□ 開催日時:10 月12 日( 土)、13 日(日) 13 時~ 17 時(※ 荒天時中止)
□ 会場:合同ビル玄関前広場(the three konohana の左隣)
□ 定員:1 日50 名まで(予約不要、定員になり次第終了)
□ 参加費用:ハンカチ1 枚 500 円(当日その場でお持ち帰り可能です)

協賛:株式会社 田中直染料店

* * *

このたびthe three konohanaでは、加賀城 健(KAGAJO Ken, b.1974)の個展を、Konohana’s Eyeの第2弾として開催いたします。

近年の日本の現代美術の領域における工芸の取り上げ方については、いささか現代人の思考に迎合していると感じざるを得ません。工芸の「ものづくり」的解釈に基づいた明確な手仕事の量的蓄積や、実用性に由来するスタイリッシュなフォルムなどの着眼には、コマーシャル的なポピュラリティーの創出が優先されているように思えます。「きれいかつ丁寧な造形」としての単純明快な基準が、これまた単純明快な権威である工芸の伝統によって支えられるという構図で、現代美術の領域に受け入れられている状況は、本来の現代美術の方向性との矛盾を感じざるを得ません。現代美術とは、既存の価値観にはないイレギュラーなものを取り上げることで、そこから未来への指針や方向性を見いだすものとしてあるべきと考えます。工芸の既存のフォーマットをただ現代美術にシフトさせることだけで、果たして未来に受け入れられる正統な革新となりうるのでしょうか。

加賀城は、これまでの作家活動の中で培ってきた、染色の伝統的な技法および素材における豊富な知識を駆使して、それらを現代的な表現へと昇華させていく多種多様な作品群を生み出し、工芸と現代美術双方の領域で国内外問わず精力的な発表活動を続けてきました。昨秋の『奈良・町家の芸術祭 HANARART 2012』のメイン会場の一つ、大和郡山市の遊郭建築、旧川本邸で開催された『「記憶」をゆり動かす「いろ」』展で発表した、建物内の吹き抜けの中庭を巨大な2本の鮮やかな布で包み込んだダイナミックなインスタレーションは、まだ多くの方々の記憶に新しいかと思います。

布に色を差して描く染色と、色を抜いてかたちを表出させる脱色。加賀城はこれらの対照的な技法を使い分けながら、自らの身体感覚を反映させるための積極的なアプローチと、染料や糊などの素材の特性による自然かつ偶発的な反応に委ねるアプローチを、その場に応じた的確なバランスで作品上に反映してきました。こうした意識の先に行き着くものは、染色が作り出すミクロとマクロの宇宙の共存だと加賀城は言います。両極にある表現や概念の存在を常に意識して、染色の素材や技法が直接的に表出させた細部の質感や触感を喚起させるミクロの視点と、染色を施した布の実用性を誇張させることにより空間性を強調するマクロの視点が、彼の表現においては常に平等のものとしてあります。この彼の揺るぎ無い平衡感覚が、染色と現代美術双方の領域を横断することを可能にしています。あえて明解なものは選択せず、両者の狭間にある未知の概念に自らを没入させることに意識を置き続けているのです。

2年ぶりの個展となる当展は、これまでの加賀城の「空間概念」への多様な解釈を一度に集結させ、平面性と空間性があらゆる形態で並存するインスタレーションに主軸を置いた展示となります。加賀城の技術や表現によって恣意的に操作されるもの、鑑賞者の視点や感覚によって左右されるもの、そして弊廊の空間の特性が反映されたもの、それらが無数のバランスでもって、可変的なインスタレーションが構築されていきます。彼にとって、ここ10年継続してきた工芸と現代美術双方へのアプローチが一つの世界観の中で結集される、近年の総決算的な内容となります。そこには安易な単一のキーワードはありません。あえて加賀城自らが置かれた立場に忠実に、淡々とヴァリアブルな空間かつ宇宙をここでつむいでいくこととなるでしょう。

工芸と現代美術、複数の領域を横断する表現が提示すべきものについて、現代の私たちの思考を問い直す機会になればと思います。ぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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《銀紙噛ム》 綿布、藍、バインダー/藍染、捺染 30 x 30 cm 2013 【当展出品作品】

 

2013-06-07
Director’s Eye #1  結城 加代子 「SLASH / 09 −回路の折り方を しかし、あとで突然、わかる道順を−」

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・「SLASH/09 回路の折り方を しかし、あとで突然、わかる道順を」 展示風景

・「SLASH/09 回路の折り方を しかし、あとで突然、わかる道順を」を振り返って

・SLASH/09展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

 

 

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Director’s Eye #1  結城 加代子
「SLASH / 09 −回路の折り方を しかし、あとで突然、わかる道順を−」
2013年6月7日(金)〜7月14日(日)

☆ 7月22日(月)まで会期延長いたします。
7月15日(月)~17日(水) 休廊
18日(木) 14:00~19:00
19日(金) 12:00~18:00
20日(土) 休廊
21日(日) 12:00~19:00
22日(月) 13:00~18:00 [再延長]

開廊時間:毎週木曜〜日曜 12:00〜19:00
休廊日:毎週月曜〜水曜
会場:the three konohana

展覧会ディレクター:結城 加代子KAYOKOYUKI
出品作家:小林 礼佳斎藤 玲児藤田 道子
デザインワーク:CRAFTIVE

オープニングパーティー:6月7日(金)17時〜
トークショー:6月7日(金)18時〜19時

* * *

Director’s eyeの第1弾は、結城 加代子(YUKI Kayoko, b.1980)の企画によるグループ展「SLASH / 09 -回路の折り方を しかし、あとで突然、わかる道順を-」を開催いたします。

結城は2011年に「KAYOKOYUKI」を立ち上げ、特定のスペースを設けず、独自の切り口による展覧会企画や、自らの取り扱い作家の企画やマネージメントなどを、東京を中心に精力的に展開しています。

彼女の仕事の中で特筆すべきものは、毎回異なる出品作家をセレクトしたグループ展シリーズ「SLASH」です。作家と共に幾度とミーティングを重ねながら、お互いの意識やイメージを共有させていくことから、企画作りは始まります。各作家およびディレクターの異なる個性を尊重しながらも自然と一つの磁場へと引き寄せるかのように、各人の思考やプロセスが丁寧かつ平等に積み重ねられて、一体感がみなぎる展示を毎回実現してきました。ディレクターの立場の人間が、作家と誠実なコミュニケーションをとって展覧会を作るということの、理想的なモデルケースの一つであるように思います。

彼女独特のバランス感覚に満ちたコミュニケーション力でもって、作家の新たな一面を引き出す手腕と、首尾一貫した思考と実行力による彼女の企画は、各所で高く評価されています。当展は、結城による展覧会企画を、関西で初めて開催するものです。この「Director’s Eye」シリーズは、展覧会を企画する専任ディレクターの育成とその役割の必要性を強調するための企画です。近年作家主導による展覧会企画が各所で目立つ中で、専任のディレクターによる企画から現れるべき思考やスタンスにおける客観性、そして作家とディレクターを分業することによって、展示および個々の作家のクオリティの向上をもたらすことの実効性を、彼女の企画を通じて強く実感していただける機会になればと思います。

the three konohana  山中 俊広

 

【当展趣旨】

このたびKAYOKOYUKIは、大阪市此花区にオープンしたばかりのギャラリースペース、the three konohana にて、連続シリーズ『SLASH』を開催致します。SLASH』展は、複数人のアーティストをとりあげ、シリーズで展開していく企画展です。

この企画『SLASH』では、単に複数人のアーティストを並べて展示するだけではなく、事前に幾度となくミーティングを重ね、お互いのイメージや意識を深く理解するところから始めていきます。その上で、それでは作品を通して、自分たちは社会にいったい何を提示できるのか、何がおもしろいのか、何が可能であるのかを話し合い、展示プランを決めます。また、それはDMのデザインにも及び、それぞれの共通する目的からキーワードを上げ、アートディレクターのCRAFTIVEとともに一つの作品を生み出すように制作されています。その時代の流行や、1人のアーティスト、キュレーターの視点に委ねるのではなく、それぞれの立場で考えを出し合い、自らの手でまず価値をつくっていくことこそが必要であると考えています。個人で完結するのではなく、また勝ち負けではないところで、それぞれの思想が交わること、そこから生まれる想像力の多様性を信じて探っていきます。

第9回目となる『SLASH / 09 -回路の折り方を しかし、あとで突然、わかる道順を-』では、小林 礼佳(KOBAYASHI Ayaka,b.1988)、斎藤 玲児(SAITO Reiji, b.1987)、藤田 道子(FUJITA Michiko, b.1980)の3人展を開催します。

小林 礼佳は、2013年に武蔵野美術大学大学院を修了し、GALLERY b.TOKYO(東京)での個展や、若手ギャラリーの集合企画展『COVERED TOKYO: October, 2012』などで、物質と言葉を組み合わせた挑戦的な作品を発表し続けています。今年行われた修了制作展においては、25平米ほどの白い空間に”く” の字型の壁を配置し、自身で紡ぎだした言葉を貼付けていきました。鑑賞者は、その始まりと終わりの不明瞭な途切れ途切れの文章を探しながらさまよい、一瞬ホワイトアウトしかける視点を、ふいに現れる言葉により現実につなぎ止められるような、複雑な感覚に陥ります。

斎藤 玲児は、2010年に武蔵野美術大学を卒業し、〈#1〉~〈#14〉までの映像作品を制作しました。最近では2013年に山手83(神奈川)で個展を開催し、最新作となる〈#13〉、〈#14〉を発表しました。日常的に撮影し続けている写真と映像を素材に、iMovieを使ったアナログに近い手法で切り貼りしていきます。かつて記録された連続的な事象は、音も図像も感情も一度バラバラになり、編集される時の斎藤の身体を通して新たに再構成されます。普段の生活の中で出会った人物、風景、出来事を扱いながらそこから一定の距離を保ち、あくまで絵の具やキャンバスなどの物質を扱うようにPCは操作され、決定されます。

藤田道子は、2004年に東京造形大学版画コース研究生を修了し、現在同大学にて非常勤講師として従事しています。シルクスクリーンの技法を使い、紙だけでなく布や鏡などの素材にもプリントする他、様々な物質を扱いインスタレーションします。薄い透明色のインクを使って、細い線の重なりによって描く幾何学模様や、木材やガラスに糸やリボンを組み合わせた作品など、モノがそこに存在することで生まれる光の反射や影などの自然現象を生み出します。Gallery惺SATORU(東京)やRyumon coffee stand(東京)などで個展を開催しています。

今年発行されたガーディアン誌が、「私たちの時間の感じ方は感情によって変化する」と報じました。脳の時間の知覚には、それまで経験した記憶や年齢などに対する相対的な情報と、その瞬間に感じている怒りや恐怖、親しみや愛しさなどの感情に対する注意のプロセスも同時に作用しているという研究結果でした。私たちには平等に一定の時間が与えられていながら、体験や経験によって、感じることのできる時間は伸び縮みしてしまうのです。 3人のアーティスト達は、それぞれが全く異なる手法によって素材やメディアを扱い、日常に複雑に絡み合う現象の瞬間を作品に収めています。もし彼らの作品に潜んでいる回路を辿ることで、それまで感じ得なかった感情や感触を疑似体験できたなら、相対的に感じるのみでは行き当たらない、リアルタイムな経験による個々の新しい回路を発見できるのではないでしょうか。

当展ディレクター 結城 加代子(KAYOKOYUKI)

※『SLASH』とは…ファンが作った2次創作作品(ファン・フィクション)の中で、キャラクター同士が結びつくようなカップリングを示す際に間にスラッシュ記号( / )を入れたことから、それらを総称して「スラッシュもの」と呼ばれています。

 

2013-03-15
Konohana’s Eye #1 伊吹 拓 展「”ただなか” にいること」

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・伊吹拓展を振り返って

・ttk開廊および伊吹拓展に関する、掲載プレビュー・レビューのご紹介

・伊吹拓展「”ただなか”にいること」展示風景

 

Konohana’s Eye #1
伊吹 拓 展「”ただなか” にいること」

2013年3月15日(金)~5月5日(日)

開廊時間:12:00~19:00 休廊日:毎週月曜~水曜、3月21日(木)
会場:the three konohana

the three konohana 開廊パーティー/伊吹拓展 オープニングパーティー:
3月15日(金)17時~22時

* * *

the three konohanaのオープニングは、関西を拠点に精力的に活動を続けている絵画作家、伊吹 拓(IBUKI Taku, b.1977)の個展を開催いたします。

近年の抽象絵画の動向には、従来の美術史の文脈の継承よりも、現代社会や日常の生活にある具体的な要素を取り入れて、再構成するものが目立っているように思えます。二次元上の造形という観点から、デジタルの概念が市民権を得たことによるレイヤー的な表現。個々人の精神の不安定さの蔓延が着想となっている超感覚的とされる表現。積極的な思考の放棄による単純な行為の反復・蓄積といったものが挙げられます。これらの背景には、従来まで絵画のアイデンティティであったはずの二次元としての画面や造形の概念が、副次的なものとして扱われるようになったことも要因としてあります。モダニズムが終焉して以降、あらためて絵画そのものの概念の行き詰まりを感じさせるとともに、それを再追究する余地はまだ残っていないだろうかという思いに駆られます。

伊吹は、自らの存在と内面の世界を深く洞察し、それらを発露させるための抽象絵画に、学生時代から一貫して取り組んでいます。なかでも、彼の特徴的な表現手法とされているものが、絵具による「積層」を通じて随所に発生する「垂れ」や「滲み」です。彼にとって筆や刷毛によるストロークと等価とするこれらの手法には、彼らしい感覚が横たわっています。それは「委ねる」ことです。

そこには、アメリカ抽象表現主義以来常に語られてきた、偶然性や自然的なものによる平面絵画内への関与を見ることができます。彼はこの他力としての要素を作品に積極的に取り入れ、更には自己にも接触させることによる流動的な変 化を強く意識しています。また、近年彼が取り組んでいる屋外での展示でも、日々の時間や天気における光の変化によって、常に同じ視覚認識で作品を鑑賞できない過酷な環境に作品を置きながら、伊吹は絵画そのものへ客観的なまなざしを投げ続けてきました。

当展は、これまでの伊吹の一貫した制作意 識から次の段階を強く示唆させる、新作のタブローのみで構成いたします。目に見えて力強さを帯びたストロークと色彩が画面上に刻み込まれ、これまでの調和感が強かった印象から、まるでその静寂を破るような画面が現れます。これまで「委ねる」という意識の下で自然に寄り添ってきた感覚から、積極的な行為とし ての「描く」ことへの渇望が強まったこと、それが彼の作品に変化をもたらしているように思います。画面上には主観対客観の単なる二項対立に留まらない、一 種の不均衡さが作品全体に漂っています。そんな複雑に入り組んだ両者の関係性が、画面上の情景に無数のバリエーションを生み出し、それらの中から彼は自らの手に委ねながら選び、掴み取っていく作業を積み重ねています。

感情という私的な概念はあくまでも画面の一部分に留まり、明確な行為としての筆致と色彩が、視覚的にも概念的にも画面上に明快なコントラストを生み出しています。それは絵画という概念の中に、客観性を備えた彼の主観の現れと考え ることができます。他力に依存する感情よりも自意識を強めた「描く」行為を通じて、絵画への客観的なまなざしを向けること。当展において伊吹は、これまでの作家活動の中で見い出したあらゆる要素を全て画面上に撒き散らし、自らの絵画を構成する物事や概念、価値観、それらの境界線などの、まさに「ただなか」 に我が身を置くことになるでしょう。

弊廊のオープニング展は、あえて絵画そのものの概念や本質についてじっくりと考える機会になればと思います。ぜひご高覧賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

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《midst》油彩、綿布 162 x 162 cm 2013 【当展出品作品】